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私の生きる道  作者: 小町
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始まり

 二十数年前、私は産まれた。

田舎の小さな助産所で。ぐったりとして産声もあげなかったそうだ。

へその緒が首に絡まり、仮死状態だった。


今思えば神様が猶予をくれていたのかもしれない。

「あなたはこんな人生でも生きたいですか?」と。


生きたい

私はそう答えたのであろう。

だから今生きている。


私の両親は若い。

今では珍しくないかもしれないが、互いに十代で結婚して、すでに子供もいた

昔は随分やんちゃをしていたそうで、父親は元暴走族のリーダーで母親は元レディースの総長という肩書きをもっていた。

それから3つ離れた姉。それが私の家族だ。


父親は長距離トラックの運転手をしておりほとんど家にはいなかった。

帰ってきても家の居心地が良くないようで

あまり笑顔はみせなかった。

母親はあまり家事が好きではないようで

料理は出来合いものかレトルトが多く

家も散らかり放題で

夜な夜な幼い、姉弟を残して遊びに出かけていた。


今で言えば「ネグレクト気味」

ただ若い母親がまだまだ遊びたかったというのも今になればわからなくはない。


親というのは異性の子程可愛いものなのか

母親は私をものすごく溺愛した

ネグレクトで溺愛とういのも何か違和感を感じるが

愛情というよりはペットを可愛がるような、そんな愛し方だった。


良い服を着せ

髪型を整え

「素敵でしょう」と言わんばかりに自慢していた。


その分姉は置き去りになりがちだった。

寂しかったのだろう。

いや間違いなく寂しかったはずだ。


私は小学生になった。

この頃の私は全身アザだらけで常に何かに怯えている変な子だった。


学校から帰ると姉と二人きりだった。

父親は相変わらず家には帰らず、母親は働きに出かけるようになった。

私は帰るとすぐ布団に潜り込んだ。母親が帰ってくるまでの時間私に自由はなかった。


姉は私を見つけると殴りつけた。

泣いても叫んでもやめなかった

次第に涙もでなくなった。それが面白くないのか暴力は次第にエスカレートしていった。

空き瓶や掃除機、布団たたきでもよく殴られた

時間は姉の気分次第

母の帰りをひたすら待つ毎日だった


母が帰ると暴力は収まった。

母も異変には気づいていただろう。

ただ仕事の疲れと

姉への少しの後ろめたさがあったのか

核心には触れないでいた。


そんな日々のなか

姉は中学生になりますます荒れた。


標的は私にとどまらくなっていた。

家中ありとあらゆるものを壊し、家は土足でないと危険で歩けないほど

ガラスやあらゆるものが散らばっていた。


「殺してやる」

私は毎日気を失うまで殴られ続けた。

私と母は姉に怯え、息を殺して暮らしていた。


ある朝


このままでは殺される。

母は私を抱き抱えトイレに逃げ込んだ。

トイレに鍵をかけ震える私に泣きながら「ごめんね、ごめんね」と何度も謝った

トイレのドアは今にも壊れそうで

ドンドンドンと激しくドアを叩く音と「殺す」という姉の怒声だけが響いていた。

私は死にたくなかった。今まで助けてなんて言わなかった。

誰も助けてはくれないから。

この日「助けて」初めてそう泣き叫んだ


誰が通報したのか

古いアパート住まい

騒音や異常な雰囲気に他の住民は私を蔑むような哀れむような目で見ていたに違いない。


ある夜、真冬に姉から逃げるように裸足で家を飛び出した。

寒さで震え、恥を忍んで上の階のおばさんの家にあげてもらったことがある。

汚い子供に早く帰って欲しいのだろう。

作り笑いで「お姉ちゃん謝れば許してくれるよ。おばさんも頼んであげようか」と言った。

あのおばさんが通報したのか


警官がたくさんきた

若い警官は絶句していた「こんなところに人が住めるのか」と。


しばらくして

久しぶりに家族四人が集まり、父親が重い口を開いた

「父さんと母さんは離婚します。○○(私)は母さんと暮らして、姉ちゃんは施設に行く」

私は笑っていた。やっと解放される。

父親はそれが気に食わなかったのか

怒鳴りながら私を殴ろうとしたが母親が止めた。

それがさらに怒りに火をつけたらしく、母親をタコ殴りにした。

殴る理由は他にもたくさんあったようだ。母親の浮気か、借金か。

ただ当時の私にはわからないし

母親が大好きだった。

「やめろ」母を必死にかばった。「お前なんか家族じゃない。出て行け」

殺されると思った。父親も怖い人だった。


ただ予想に反して

「そうか」と寂しそうに言い残し家を後にした。




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