プロローグ
~プロローグ~
青年は理解しようとしていた。今、自分のおかれている状況を…
彼は努力しようとしていた。しかし、青年のしようとしていることは現状すべて意味をもたなかった。暗い部屋の中、電気は付かず窓には鉄格子がはめ込まれ窓の外には不気味な赤い月が昇っている…そんな異様の中にひときわ目立つ一人の『少女』。目の前にいる少女がこの異様な空間をさらに異様なものにしていた。青年の肩ほどもない背丈、肌は白く薄暗い部屋の中でもそのがわかるほどだ。少女はゆっくりと近づいてくる。
「どうした?なにを恐れている?」
青年の心を見透かしたかのように低く重く、それでいて少女特有の透き通る声だ。寒い部屋が一層寒くなった。
「我を受け入れよ。さすれば己が力を返してやろう。」
力?返す?少女に貸した覚えはないし、そもそも力なんてなにも-
「考えても無駄よ。貴様にこれを与えるのは2857回目だが…もっとも、それは今の貴様ではないからな…」
ゆっくりと近づいてくる少女。すると不意に止まり口を押さえたかと思うと口から大量の血を吐きだした。
「まぁ、こうしている間にも、貴様の世界は我を異物とし拒絶したがる…ふっ。これも力を持つことへの代償か…では、時間がない。そろそろ終いとするか。」
少女は血を吐いたことが日常かのように淡々と言う。そして静かに手を伸ばす。
「古より伝わりし赤き剣をここに!!」
少女の周りに小さな魔法陣がいくつも浮かびあがり、それが次第に一個の大きな魔法陣になった。その魔法陣の中心に赤い剣が出てきたのだ。
「…!!」
青年が驚愕し声を出せない中、少女は剣を引き抜き軽々と素振りを始めた。
「貴様がこれを見るのは始めたがこれは遥か昔に貴様から預かったのだが…まぁ知らないのも無理はないか…」
少女はまた歩みよってきた。また一歩、また一歩…
「今から貴様にこの剣を突き立てる。なに心配するな、元はこれも貴様一部。痛みは一瞬で終わる。」
そう言うと青年に切りかかってきた!!-この少女は俺を殺そうとしている!!-
「やっべ!!」
寸前のとこで回避し、袖のそばを剣が通る。
「…ッ!!」
こいつ本気だ!!本能的に体が出口に向かう。
「逃げるな…我も大変なのだ。この状態を維持するのに時間を掛けたくない」
逃げる途中で少女のほうを向くとなにかの言葉をくちづさむ。だがそんなのにかまってられない!あと2m-
「-断罪せよ!!」
突如、目の前の出口がなにかに塞がった。それは鉄のようなものだった。
「くそ!。なんだよ!」
「貴様の力の応用さ。そんなことも忘れたか」
すぐ後ろから聞える少女の声。振り向くと剣を高らかに掲げる少女が-
「や、やめ-」
「では、また会おう。我が友にして最大の敵よ。」
少女は無慈悲にも剣を突き立てるー
こうして不遇な青年と不思議な少女の壮絶な闘病生活が始まったのだった-