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天使の見守り

作者: 一理

 その昔

 人は神によって創られ、神の保護のもと存分に愛され、何不自由のない生活を送っていました。

 しかしある日、狡猾な蛇に唆され、食べてはいけないといわれていた禁断の知恵のリンゴを食べてしまったのです。

 あぁ、可愛そうな人間。愛おしい素敵な楽園を追放されてしまいました。

 神の保護の手から離れたけれど、輝きに満ちていた愛に飢えた人間は、二人ぼっちの中お互いを求め、たくさんの仲間を作り、自分たちの楽園を作り上げていったのです。

 彼らの作る道筋を、いろんな天使たちが手助けをしました。

 火を授け、知恵を授け、言葉を授け、愛を授け……

 それは決して許されるものではないものも、中にはありました。けれど、神は最後にはお許しになったのです。

 お優しい神様 

 そして、なんと愛おしい人間


 天使たちは楽園から去った人間たちをずっと見守ることにしました。

 愛に生き、人生を満足して散る人間。

 夢を追い、輝く道を突き進む人間。

 考え、悩み、そしてそれを言葉にして謎を解き明かそうとする人間。

 家族のことだけを考え、幸せに過ごす人間。 

 悪魔にささやかれ道を踏み外す人間。

 感情に支配され、相手を見やれない人間。

 いい人間も悪い人間も、悪魔に唆された人間も、壁にぶち当たっている人間も、生に一生懸命な人間も、苦悩する人間も、天使たちはいろんな人間たちをずっと見守り続けました。

 天使たちにとって、とても人間が愛おしくてたまらなかったのです。

 長い長い時の中、人間たちを見守り続ける天使たちに、神様は問いました。


 ーーー人間ばかり見ていないで、すべてのモノに目を向けなさい


 草も、花も、虫も、鳥も、魚も、雲も、空も、海も、山も、川も

 すべてが愛おしく、輝き。そこに存在しているものではないか、と。

 天使たちは微笑んで神様に言いました。


 ーーー人間だから、見守るのです。

 

 草も、花も、虫も、鳥も、魚も、雲も、空も、海も、山も、川も

 すべてが愛おしく思えますが、確立してあるものです。

 人間ほど、不十分で不完全で、愛おしいものはないじゃないですか、と

 神様はそういってまた人間たちを見守り続ける天使に、小さくため息をもらしました。


 ーーー好きなだけ見ていればいい。

 

 本来やるべき与えられた仕事もせず、悩める者に手を差し伸べることもせず、ただそうやって日がな一日……いや、長い時を寝そべって人間を見ているだけ

 悪魔のほうがよほど活動しているのではないだろうか。あぁ、まったく……


 ーーーお前たちこそ、不十分で不完全な存在だ。


 神様はそう囁いて、天使たちのもとを去るのでした。


 

   

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