発展途上関係の来訪
題:彼女の昼下がり 必須要素:奴の小指 制限時間:15分
昼ご飯にお米を炊くことにした。
一人分の米を炊くのであれば、炊飯ジャーよりも雪平鍋を使うほうが、
簡単だし、
うまい。
僕はそう思っているのだけれども、人がどうかは知らない。
冷蔵庫には納豆と、たらこがある。
棚にはインスタント味噌汁もある。
十分じゃないか。
冷蔵庫の卵コーナーにある最後の卵と納豆を混ぜて食べようと思う。
たらこは少し焼きが欲しいので、ひとかたまりをレンジに入れてチンする。
味噌汁は食べる直前にお湯を入れることを忘れないように。
十分すぎるほどだ。
僕は昔から鍋で米をたいて食べている。
男一人の暮らしなのだ。
それでいいと思っている。
それに、
もしかしたら、
炊き上がるまでを待つあの時間が僕は好きなのかもしれない。
あの火を止めてから待つ、15分から20分ほどの時間だ。
その間に溜まった食器を洗ったり、洗濯を干したり、ポストを開けたり、新聞を読んだりするのだ。
いい時間だ。
お湯だって沸かせるし、コーヒーだって飲める。
こうやって話を一つ書く事も出来る。
僕の昼は大体こんな感じで流れる。
今の時代世間ではゆっくりご飯なんて食べられないらしいが、僕に限ってはそんなことは無い。
平和にご飯を食べる。
その時間が何よりもうれしいし、愛おしい。
好きだ。
愛している。
でも最近、僕のその平和を壊す奴が居る。
加奈子だ。
彼女は近所に住む僕の知り合いで、
僕が米を鍋で炊いているのを知った時から、良くここにくるようになった。
面倒だ。
彼女の昼下がりを僕の家で消費して欲しくない。
奴の小指と僕の小指とが何かの糸でつながっているわけでもないのにだ。
でも、
そのために一人用の鍋しかない僕は炊飯ジャーを買った。
彼女はそれを見て文句を言ったりする。僕もコノヤロウみたいに言い返したりする。
それでも、美味しいと言って食べる彼女が僕は内心嫌いでは無いのだ。
恋愛にしちゃったー!(#^.^#)テレ照れ。