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漆黒の鷹  作者: 桐原草
第二章 十市(とおち)
11/15

閑話

鷹と十市と高市のイラストをいただいたので、うれしさの余り衝動的に書きました。

診断メーカーからお題をもらって書いています。

漆黒の鷹で殺伐・ヤンデレものを創作するならお題は/君がいなきゃ息も上手に吸えない/愛情表現=痛めつける/心までは手に入らない です http://shindanmaker.com/238431


 漆黒の鷹と十市、そして今は高市が、村人から離れて住んでいる家の裏手に、季節になると見事な花を咲かせるしだれ桜があるが、今はもう花は終わって青々とした葉桜へと移り変わっている。その下には、いつもならちょこんと座り込んで繕い物など手仕事をしている十市の姿があるのだが、最近はなにやら賑やかなことが多い。

 

「ぐっ」

 木刀の突きが見事に高市の胴に入り、高市はものも言えずうずくまった。

 鷹による訓練が始まってもう十日たつ。打ち身による青あざやねんざ、擦り傷、内出血など。高市の体は赤かったり青かったり包帯を巻いていたりと、怪我していないところを探す方が大変な状態になっている。

 

「たけちっ」

 しだれ桜の後ろから思わず飛び出したのは十市。痛めつけられている高市をこれ以上見たくないから帰ろうとして、そっと木の陰から抜け出そうとしていたところだった。

「大丈夫ですかっ」

 素っ気ないそぶりで高市は十市を追い払おうとするが、気管をもろに突かれたらしく咳き込んでしまって動けない。そんな高市を見て、十市はせめて咳だけでも止まらないかと高市の背中をさすり続ける。

 そのかいあってか、しばらくすると高市の咳き込みが少し収まってきた。高市は、十市に小さな声で「ありがとう」とささやきながら、そっと自分のものより小さな白い手を背中から外した。

 十市は溜息とともに「収まってよかったです」とつぶやくと、立ったままの鷹に向かって少し唇を突き出す感じで睨み上げる。

「たけちはまだ始めて間もないんですから。少しは加減してください」

 十市の目は鷹をとがめるような光をたたえている。が、鷹はどこ吹く風で、高市を一瞥する。

「もう終わりか」

 冷笑するようなその言葉に、高市は反射的ににらみ返した、が、

「痛てっ」

 先ほどの強烈な突きを受けた胸が痛んで、再び座り込んでしまった高市に寄り添いながら、十市はもう一度鷹をなじるような目で見上げる。

 鷹は十市のその視線をかわしながら、高市に声をかけた。

「敵は容赦してくれはしないぞ」

 そのまま立ち去ろうとした鷹に、高市は精一杯の声を張り上げた。

「待てよ。まだ参っちゃいねえ」


 鷹はゆっくり振り返った。その口元がおかしそうに歪んでいるのを見て、十市の胸にざわっとしたものが走った。

――鷹は高市を気に入ってるのかも。


 ずっと鷹と二人きりの生活だった。

 わがままを言って困らせたときは少し眉を寄せるようにして頭を何度も撫でてくれた。

 お母様を思い出して悲しくて、鷹の胸の中で泣きながら眠ってしまったことも何度もある。背中をぽんぽんと軽く叩いてくれるだけで安心して眠りにつくことが出来た。

 花を摘んできて差し出したときは、照れくさそうな微笑みで「ありがとう」と言うその声の響きも覚えている。

 冗談を言って笑うときは唇の右側がほんの少し上がるのも知っている。

 けれど高市と鷹のような、体でわかりあえるような付き合いはしたことがない。

――男だから? それとも高市だから?


 答えが知りたくて鷹を見上げれば、鷹は高市に向かって「用意しろ」とでも言うように顎をくいっと上げて、竹刀がわりの棒を指し示していた。

 少しでも痛くないようにと、十市が棒の先を布でぐるぐる巻きにして、ざらついたところをやすりで丁寧にこそげ取ったものである。巻き付けられた布がやけに大きくて不格好なのだが、高市も鷹も文句を言わずに使っている。

「ちきしょう、ちったあ、加減しやがれ」

 高市は棒を杖の代わりにして立ち上がりながら、「絶対楽しんでるだろ、覚えてろ」と鷹への呪詛を口にする。

 その言葉が耳に入ったのか、鷹はククッと笑みをこぼしながら言った。

「刃向かう元気があるならまだ出来るな。泣いて逃げ出さなかったのは褒めてやる」

 その言葉は負けん気の強い高市に火をつけた。

「お前になんか褒めてもらわなくても結構だ。おいらが強くなったら見てろよ。もうすぐだからな」

 鷹は少しのけぞるようにしてハハッと笑い声を上げた。いつもは長い髪で隠すようにしている火傷の跡がちらっと覗いたが、十市は久しぶりに見る、鷹の明るい笑顔しか目に入らなかった。

 

 そんな十市のほんの少し上気した顔を、高市はチラリと横目で見ていた。

「ちきしょう、ワリにあわねえ」

 見たくねえものばっかり見ちまう。高市は十市に聞こえないくらいの小さな声でつぶやくと、鷹の胸元めがけて突進していった。


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