二話 死、変身
目覚めると朝になっていた。
樹憶は服は昨日のまま、ベッドに寝ていた。
樹憶は不思議だった。
部屋に入った記憶は無い。起きたばかりで眩しいため目を細くしながら樹憶は天
井を見つめた。
(なんで寝てんだ…てかあの女の子は…)
樹憶は部屋を軽く見回す。女性の姿はない。
(やっぱり夢か…なんだったんだろ…やけにリアルだったし…)
樹憶はおもむろに指で唇を触ってみる。
あの時、確かに唇と唇が触れた感じがした。
キスなどしたことはない。
樹憶は顔は世間的にはまぁまぁだが女性と交際した経験はなかった。
あの夢の続きを見たいが、目がさえてしまった。
昨日の疲れは抜けていない。
まだ布団は温かい。
「はぁ・・・」
ため息をつく。部屋は寒過ぎて息が白くなる。
樹憶は冷たい床に足をつけトイレへ向かった。
時間はあっという間に過ぎる。
樹憶は、ケーキ屋以外のバイトもしていた。
大晦日まではバイト三昧。
年明けは家族や大学の少ない友人と新年会に明け暮れた。
1月3日
新年会が長引いたため、帰りの電車が無くなっていた。
幸い、下宿先に近かったため歩いて帰ることにした。
街灯のあかりが照らす道をひたすら身を縮めて歩いた。
土地勘があまりない道。
携帯の地図が頼りであった。
樹憶以外道に人はいない。
薄気味悪く感じた。
公園を横切ろうと思い、樹憶は公園に入った。
「ああああ・・・・」
突然、叫び声のようなものがかすかに聞こえた。
(酔っ払いか・・・?)
樹憶はこう思い、家の方向に歩き続けた。
公園は意外に広かった。
樹憶は広場のようなところに出た。
ふと右の方を見る。
(!?)
人が倒れている。
そしてそのすぐそばにもう一人、男が立っている。
男が樹憶の方向に突然走ってくる。
男の手にはナイフのようなものが握られている。
とっさに樹憶は逃げようとした。
(と、通り魔!?)
樹憶は走った。
足に力が入らない。
「あっ!!」
ドサッ
何かにつまづいた樹憶は地面に思いっきり倒れた。
ハァハァ
後ろから男の息の音が聞こえる。
グサッ!!
「ああ・・・」
倒れている樹憶は男に背中を刺された。
気が薄れる・・・
(あっ・・・・死ぬ・・・痛っ・・・・うん!?)
タッタッタッ
男は少し樹憶を見たのち、その場を去ろうとした。
スタッ
突然、樹憶は立ちあがった。
「うん?」
男が振り返った瞬間、
ズバァッ!!
男は樹憶の持っている大きな鎌によって斬りつけられた。
「殺してくれてありがとよ・・・」