PM10:00 「ロスト・チルドレン」
燃え上がる工場の外縁、ステルスヘリの傍らに集う子供達から手掛かりを聞き出していた。
消息が途絶えたとは言え、この六人の誘拐事件とアメリアの誘拐には共通点があった。
使用された車両が全て同一だったこと。
また、判別が行えないようにナンバープレートが全て取り外し済みだったこと。
そう、犯行の時間も同じ午後四時前後だったことも共通点に含まれる。
本筋には遠い手掛かりだが、まだ探る余地はあった。
しかし生き残った当事者は状況を呑み込めていない子供のみ。発言から情報を聞き出すのもまた至難だった。
「覚えてる限りで良いんだが、君らを攫った奴は何か気になることを言ってたかな。
使ってる車の台数とか⋯⋯他にも攫われた子がいるとか?」
子供達は皆顔を見合わせたが、首を横に振るのみ。
俺は肩を落として落胆した。
「さっきの⋯⋯あの人が〝別働隊と連絡がとれない〟って⋯⋯」
あの人と、指を指していたのはヘリの中に転がる遺体。
あまりの激動に皆感覚を麻痺させていたが、子供の目が届く場所から死体を隠し忘れていたことに俺は動揺した
だが当の本人らはその気持ちも知らず、なんなら指で何度もつつくあり様だ。
子供達の目を出来るだけ逸らさせる為に俺は言った。
「俺は君らを送れない。出来るだけ人目につくところに向かうんだ。
大通りとか、警察の眼に留まるところが良い」
粛々とこの汚染区域から出る経路──フェンスの裂け目まで──を綴ると、帰ってやるべきことの一つに「シャワーを浴びろ」を挙げ、少しだけひょうきんな口調で脅しをかけて帰した。
形容もし難い独り言をぶつぶつと垂れながら、それでもやるべき事をやらなければならない。額を外装から離して、その機体の全容を見て回る。
確認しようとしたのは所属先。しかしこの輸送ヘリにそういった表記は無かった。
機体の型式も、彼自身が戦地で見回ったものとは異なる。
しっかりと調べれば当てはまるものがあるかも知れないが、少なくとも記憶の限りではこの機体は見たことがなかった。
諦めて、後部ハッチから操縦席に渡る。
機体に設けられた端末から通信記録を確認。そこには直近の指令が残されていた。
『───本部より通達。〝調整兵士〟部隊の投入により、急遽回収地点を変更する。〝質料〟を回収後、運搬者を処理するように───』
業務的な指示には一切の余情が無く、先の運搬者──下請けの誘拐犯らとは全く空気の異なる音声が続く。
操縦席で肘をついて思案に耽り、さっきの子供が言っていた別働隊と、音声内に示唆された〝部隊〟なるものに関心を寄せる。
「〝調整兵士〟⋯⋯」
言葉の余韻は与えられず、この時、何処かから轟いた爆音でゆっくりと席を立つ。
矢継ぎ早に巻き起こるアクシデントにはもう慣れた⋯⋯
機体の外、遠方には大きな粉塵が巻き起こっているのが見えていた。
夜景に照らされた粉塵の出処はゾーンS内の工業施設、原因は大型のサイロの倒壊のようだ。
殺戮を繰り広げた謎のライダー
連絡の途絶えた別働隊、もしくは〝調整兵士部隊〟
そして突然の回収地点の変更。
結論づけるには早くとも、目の前の光景からある程度憶測を結びつけるのには十分だった。
暗躍は、このすぐ近くで起こっている。




