「ヒルデガルデ様、大変です!」「なんじゃ?」「景色が動いてます!」「なんじゃとぉ!?」
オーデットさんが、驚きの声を上げるからさ、ヒルデガルデさんがね。
「ぬ?
オーデット、どうしたのじゃ?」って確認を。
したらオーデットさんがさ。
「ヒルデガルデ様!
周りの景色が!」ってね。
いや、それじゃぁ、分からないと思うよ?
現にヒルデガルデさんがさ。
「はぁ?
周りの景色が、どうしたと言うのじゃ?」
訝しげに、周りを確認してるね。
「なっ!
なんじゃぁぁ、コレわぁ!」
ビックリして立ち止まるヒルデガルデさん。
っても、皆は急には止まれない。
時速30キロで歩いてますからねぇ。
でも!
安心してください。
この“地走り”魔法は優秀なのでございます。
個人個人の歩みに合わせて地が移動しております。
そう、その部分だけが、独立したルームランナーの如し、ってね。
で、その歩んだエネルギーは、全体移動中の地面へと。
その分、マシマシで動きます。
ヒルデガルデさんも、慣性にて倒れることは、ございません。
その慣性分のエネルギーも、先程と同様に全体移動中の地面にへとな。
だから、ヒルデガルデさんに合わせて、皆が立ち止まったんだが、地面は走ってます。
なにか?
まぁ、俺は止まらず歩いているんだが。
その分、進むからね。
「こ、これは?
なんじゃ?
周りの景色が、凄い勢いで動いておるぞ」
「分かりませぬ。
ハッ!
もしや、コレが“地走り”の魔法なのでは?」
そうオーデットさんが気付く。
流石だね。
「そ、そうか。
いや、それしかあるまい。
うーむぅ。
さ、流吾、流吾じゃのー
って、納得できるかぁぁぁっ!」
あ、キレた。
「藤吾ぉ!
説明を、説明を求める!
いや、師匠命令じゃー
説明せいっ!
はよっ!」
えー
また、理解してくれずにさぁ、流吾っうんでしょ。
意味あるのかなぁ?
「簡単に説明すると、僕たちが乗っている地面が動いているんです。
そうですねぇ。
川に浮かべた船に乗ったら、船が流に乗って動くじゃないですか。
それと似た感じでしょうか?
ただ、僕たちの歩みに合わせて、動くようになっているのと、移動速度が速いですがね。
詳しくは省きますが、歩みを止めても、しばらくは地面が動きます。
そうしないと、事故が起こりますから」
まぁ、最悪は慣性を魔法で中和すれば良いんだけどさ。
これが俺の世界で実用化できれば、革新的、いや革命的な技術となるだろう。
電車に乗っていて、急ブレーキによる転倒事故は無くなるな。
いや、電車がカーブで周り切れないなんてことも無くなる。
電車に限らず、車など様々な乗り物に影響するだろう。
なにせ、スピードを上げてカーブを曲がり切れない、てなコトは無くなる。
カーブの際に発生する慣性を中和するんだからな。
そうなると移動速度が上るから、物流に影響も。
したら物価にも影響するだろう。
軽く考えても、これだけの影響が出る。
まぁ、アチラで魔法を使う予定はないがな。
使っても個人的にだ。
知られたら煩わしいことになりそうだしなぁ。
俺の力で退かせたり、防ぐことは可能だ。
報復したり、従わせたりもできるだろうさ。
だが、面倒臭せー
俺は普通に生きたいんだわ。
できたら気楽にな。
今の家族と別離するまでは、あの世界では一般人に混じって過ごすかんな。
それが可能なのは、アカシックレコード経由で確認済みだし。
その分、コッチでハッチャケますが、なにか?
「ほ、ほうかえ?
ほうなんじゃのぅ。
地面が船みたいにのぅ。
・・・
納得できるかぁっ!」
「ヒルデガルデ様。
アレですよ、アレ。
ヒルデガルデ様が、仰ってたじゃないですか。
流吾?
そう、確か流吾でした!
アレしか、無いのでは?」
そうオーデットさんが告げるとな。
「くぅー
またぁ、それしか無いのかやぁ!
理解不能過ぎるぅ!
くぅ!
アレはぁ、藤吾ぉ!
藤吾なのじゃぁ。
うむ、さ、流吾、じゃ、の、う」
あ、無理やり納得?した。
むしろ諦めた?
そうそう、使用人の2人は、理解不能で固まってます。
なんかさぁ。
ごめんね、ごめんねー、ってな。




