魔本ですか、そうですか。
「まぁ、我がココへ庵を築いた由縁であるからの。
ゆえに、精霊樹が枯れては元も子もない訳じゃて。
しかも精霊を宿してはおらぬが、精霊樹に近しい種の樹木が多くてのぅ。
コレらを混ぜて嵩上げすれば、多くの魔本が作れる。
精霊樹の素材だけで魔本を作るとな、高品質の魔本ができるのじゃが、高品質過ぎてのぅ。
何処で魔本の素材を得たかと騒ぎになるでな。
ゆえに、ワザと品質を下げてもおる訳じゃ」
へー
魔本作りにも、色々と気を使わないとならないんだなぁ。
「それに初版本以外は魔術にて、初版本を元に作り出す故にのぅ。
紙やインクを用意せずとも、精霊樹の葉と近しい種の樹木から得た葉を用意すれば、魔術で製本可能じゃ。
魔力さえ持ち葉が有れば、短時間で、いくらでも作れるでな」
いや、ヒルデガルデさん?
それって、ズル過ぎないっすか?
「人のことズルいってますけど、ヒルデガルデさんも大概ですよね?」ったらな。
「失敬な。
我は研鑽して、この技術を編み出し身に付けたのじゃ。
多少は魔本にて習得した魔術もあるがのぅ。
しかしじゃ。
魔本に適合して習得できるなど稀じゃて。
普通は様々な修練をしつつ身に付けるものじゃからのぅ」
まぁ、努力無しには身に付かないよね。
俺は身に付いたみたいだけどさ。
確かにチートかぁ。
「さて、確か精霊召喚の魔本があったハズじゃ。
我が作った本じゃが・・・我は召喚系に適合して無くてのぅ。
しかも身近に素質ある者も居らなんだ。
なので、作ったのは良いが、試したことが無いのじゃよ。
元にした術式は確かなので間違えはないハズじゃ。
ゆえに藤吾が試してみてくれぬか?」
あー、モルモットなんですね、分かりたくありません!
っても、希少な魔本を使わせて貰える訳だ。
ここは、有り難く使わせて貰うべきだろう。
「分かりました。
やりますよ」
そう告げたらな。
「おお!やってくれるか!
ならば、庵へ戻ろうではないか」
そう告げられ、俺たちは館へ戻ることに。
しかしさぁ。
なんで、この規模の建物を庵と言い張るかね。
金持ちの感性は分からんな。
館へ戻ると、メイドさんが魔本を持って来た。
ああ、そうそう。
メイドさんも、ヒルデガルデさんと同じシルファーナ人だよ。
1人は綺麗な、お姉さん。
うん、理想的なメイドさんかな?
1人は、お婆さん。
なんでやねん!
まぁ、あまり喋らず、ヒルデガルデさんの後ろに控えてるんだけどね。
ペットボトルのミルクティーと、ココ○ッツサブレには夢中になってたけどなっ!
で、持って来てくれた魔本を机の上へ置いてくれたんだが・・・
「なんか、10冊もあるんですけど?
全部違う魔本なんですか?」
そう尋ねたらな。
「我が持つ精霊魔術の魔本を全種類持って来させたからのぅ。
我が知らぬ精霊術魔本や手に入れられなんだ魔本もあるゆえ、全てではないぞぇ。
まぁ、大概は揃っておるハズじゃ。
ああ、そうそう。
コレらは原本では無いからの。
複製本ゆえに、気兼ねなく使うが良い。
用意したのは、次の精霊召喚魔本じゃな。
基本の四属性である地水火風の精霊。
派生である雷、氷、樹の三属性。
上位精霊の光と闇のニ属性。
特殊精霊の命精霊。
これらの10属性じゃ。
全てに対する素養や適正はないハズじゃが、試してみるのも良かろうて。
まぁ、そうじゃのぅ。
まずは、水精霊召喚の魔本から試してはどうじゃな?」
まぁ、フォーさんが期待してるし、そうするかな。
そう考えた俺は、水精霊召喚の魔本をヒルデガルデさんに教えて貰い手に取った。
まぁ、素養があり適合する者は限られるそうだから、まず無理だろうけどさ。
試すだけなら問題ないハズだ。
そう考えながら、手にした魔本を開く。
バン!バシュッゥッ!
ビックたぁ!
また爆発するんですかぁ!
心臓に悪いわい!
って、これって・・・
「また藤吾は適合したのかえ?
本当に規格外じゃのぅ」
そう呆れたように言われてもさぁ。
流石に俺が悪い訳じゃないだろ、これ。




