さぁ、ウサギ肉丼ができたよ。食べてくんろ。いや、どったの?
俺が調理するのを、目を点にして見ていたアムズさん達がな、丼が完成してから騒ぎ出す。
どったの?
「藤吾、様、で、あらされましたか?」
そんなことを、ペルサラスさんがね。
急に畏まって、どったの?
「うん?
藤吾で有ってるけど、なに?」ったらな。
「今、何をされたので?」ってさ。
いや、どう言う意味?
訳分からん?
「?
なにって?
単に調味料になりそうな果実や香草に香辛料を採取して、肉を薄切りにしたでしょ。
あと、お米みたいな種が詰まった実を採取したから、食材が揃ったんだよね。
なので、調理台や調理器具を創造して、皿やカトラリーも創造してから、調理したんだよ。
肉を、作った漬け汁へ漬けたんだけど、時間掛かりそうだから魔法で浸透させてね。
その間に米の実を魔法で加熱して炊き上がげたりさ。
キャベツと白菜の間の子みたいな野菜を千切りにもしたよ。
炊き上がったご飯を丼へ盛って、その上へ千切りの葉野菜を盛ってから、焼き上がったウサギ肉の薄切りをタレごと乗せた訳さ。
多分、美味しいと思うんだけどなぁ。
食べてみない?」
そう説明したらさ、なんか絶句したんだけど?
ほんと、なに?
「藤吾様や。
分身されておられましたわえ。
それに、考えられぬ速さで、作業なされて、おられましたのぅ」
ヤーヤマーサ様が、コロコロ笑いながらさ。
へ?
そんなんなってたの?
ん?
考えごとしながら移動していたため、その間は時が止まっていたらしい。
さらに、採取や調理の要所要所では、時止めを止めて動いていたが、集中し過ぎて動きが高速になっていたそうだ。
時を止めなくとも、残像が発生するレベルだっんだってさ。
え?
なにそれ、こわい!
無意識だったんだがな。
これ、事案じゃね?
俺の世界で無意識にしたら、不味いよね。
ん?
そこは、テンさんが時を止めたりしてフォローするから大丈夫?
いや、マジで頼りになります!
お願いしますね。
で、分身事件に対する釈明を。
したらな、ヤーヤマーサ様は、大笑い。
他の方々は、人外を見るように畏怖の目で。
いや、別に害する気はないからねっ!
「そ、そんなことよりですね。
せっかく作ったので、食べてみませんか?」
そう告げると興味を持ったのか、ペルサラスさんが丼を持つ。
持つんだが、食べ始めない。
はて?
「なぁ、藤吾様。
コレって、どうやって食べるんだ?」
あ、しまった。
この世界は食文化か壊滅的だったよ。
だから、基本的に手掴みなんだが、丼料理は手掴みでは食べ難い。
スプーンとフォークを添えておいたんだが、カトラリーなんか存在しない世界だ。
使い方なんか、分かるハズもないわなぁ。
「コレで掬って食べてください。
私が食べてみせますね」
そう告げて、スプーンで掬って食べる。
うん。
ウサギ肉の味を殺さない程度に、肉へ染み込んだ漬け汁の味が効いている。
肉へは、完全に火が通っているが、魔法で焼いたため、肉汁が失われず、実にジューシーだ。
コレ、下手したら肉がバサバサになるからなぁ。
しかも、マヨネーズもどき果汁が、肉に絡んでさぁ。
これがマロ味を与えて更にぃ、ドンっ!
肉を焼く前に、油にて炒めて香りを引き出した、ニンニク風香草とネギみたいなハーブの香りが、食欲を増してくれる。
さらに、キャベツと白菜が合わさったような葉野菜。
この千切りの仕事が素晴らしい。
シャキシャキなのに硬過ぎず、ジューシーだが水っぽくもない。
しかも爽やかな香りまで付いてくる。
コレがウサギ肉をサッパリと食べさせる訳なんだが、ご飯もどきが、それらをシッカリと支えてさぁ。
うーん。
口の中で共演を。
いやぁ。
実に素晴らしい、演出ではないかっ!
そうなると、もう、手は止まらない訳でな。
そんな俺を見て、堪らず手を出す面々。
夢中で食べ始めていますね。
まぁ、精霊力は込めてないからか、惚ける人は居なかったけどなっ!




