ウサギ肉を調理しようか。調味料料はソコら辺の植物に何かないかなぁ?
解体が終わり、内臓の下処理も完了だ。
こうなると、味がどう変わってのかを知りたいだろう。
だが、飼育された生き物のではない。
野生動物の肉だ。
だから、多少の臭みがな。
まぁ、それでもアムズさん達は、いつもとは違うと思うだろう。
だが、あまり時間は掛けたくはない。
そのため、今は汁物は作らない。
簡単に焼くだけとする。
するんだが、周囲を軽く見渡すと、様々なハーブや香辛料に柑橘るいがさ。
いや、明らかに植生がおかしいんですが?
だが、使える物は使おう。
っかさぁ。
醤油の実ってなに?
テンさん命名?
あ、そなの?
実中身が醗酵し、醤油みたいになっているそうな。
油菜ならぬ油実とか、植物性油が詰まっている実とか、アホの?
下手したら火事にならんか、これ?
え?
セリアムが魔法で監視するシステムを構築しており、火事が発生したら消火している?
それまでは、結構な頻度で火事が発生していたぁ!
マジかぁっ。
他にも、精米した、うるち米みたいな種が詰まった実とか、硬い種皮を割ると酒が入っている果実とか。
いや、セリアム界の植生が異常なんだが?
はい?
古のセリアムが絡んでる?
いや、まさか・・・品種改良?
え?
品種改良で、こんなこと、できるの?
明らかに異常だろ、これ?
魔法を駆使して、様々な品種を掛け合わせたらしい。
終いには精霊力を使用した物質変異が行えるようになり、通常では考えられない物も造り出せるようになったらしい。
その副産物がコレらであり、長い年月が経った現在では自然に進化して、様々な植物が生まれているそうな。
最後には転移についての魔法構築に挑んでおり、その魔法暴走にて、他の世界へ渡ったんだってさ。
マッドサイエンシストならぬ、マッドウィザードやね。
で、こんな便利過ぎる植物が存在するんだが、アムズさん達は、まったく使っていない。
っか、使えるとは思ってないみたいだ。
しかし、パンも無く、バナナみたいな果物を皮ごと焼いて、皮を剥いて食べるのが主食って。
いや、時止めして試食してみたんだがな、コレ結構イケたわ。
いや、びっくり。
栗芋みたいな感じで、ホコホコと甘いがクドクないだよね。
コレと肉が合うし、魚とも相性が良い。
そんなんが育てなくても、そこら辺へ普通に生えてるからなぁ。
そらぁ、他の植物を試そうとは思わんか。
そんなんして、食当たりするくらいなら、自分が習得した技術を磨きたいみたいだ。
良く学者や芸術家が、寝食を忘れてノメリ込むシーンが、物語へ描かれるが、アレを種族的に行っている感じか?
だからって、食生活を蔑ろにするって、どうなんだろね?
俺は、周りの植生を説明しながら、幾つかを採取する。
しかし、醤油の実はまだしも、ソースの実にケチャップの実、マヨネーズの実とタバスコの実などなど。
いや、命名はテンさんだが、全く同じでは無いが似た感じの代物がさ。
有り得んだろ!
ふざけてんのか、古のセリアムぅ!
調味料が無い問題が、コレらの存在で解決した訳なんだが、なんか釈然としてない。
しかし日本の企業が知れば、絶対に欲しがるだろうな。
その侭を商品として出すには、品質的に至らないだろうが、加工用素材としたら、あらゆる工程をスキップできるだろう。
垂涎の品だな。
醤油の実は超減塩醤油風の果汁なので、塩を加えて溶かす。
うん、醤油だ。
これと、砂糖味醂みたいな果汁を合わせ、それに薄切りにした肉を漬ける。
あまり長く漬けると辛くなり過ぎるから、適当に取り出して、溶かしバターみたいな果汁を塗ったフライパンで焼く。
で、マヨネーズ風果汁を絡め、香草と香辛料をパラリと。
米の実は、実の侭を魔法で加熱。
中が煮えて炊き上がる。
釜要らずってか?
実を割り炊けたご飯もどきを器へと。
そのご飯の上へ、焼いた肉を乗せる。
セリアムウサギ丼の出来上がりってね。
さぁ、おあがりよ。




