あーハズ。知らぬ内に語っていたみたいなんです。ほんと、ハズいっ!
え?
なんで見てんの!?
「ど、どうか、されましたか?」
なんか変だったか?
「いやのぅ。
藤吾様が、あまりに美味そうに食べられるゆえにのぅ。
しかも、味の解説付きでじゃ」
え?
「声に出てました?」
「おや?
無意識であったのですかや?
実に美味そうに語られて、おられましたわえ」
あー恥ずっ!
まさか、口に出していたとはっ!
「まぁ、実際に美味しかったですし。
皆さんは、どうでした?」ったらな。
「藤吾様」って、教皇様がね。
「はい、なんでしょう?」
そう尋ねると。
「単純に焼いた肉が、なぜ、ココまで美味しいのでしょう?」
そんなことをな。
いやいや。
焼いただけちゃうしぃ!
「いやいや!
キチンと調理してますからね」
したらな。
「?
調理?
妾らが、いつも食べておる食事も、調理人が調理しておる。
じゃが、この料理とは、雲泥の差なのじゃが?」
そんなん言うんですが?
「当たり前じゃないですか!
バハラキの料理は、料理じゃない!
ありゃぁ、焼いたり煮たりしただけの品です!
しかも食材に対する処置も最悪だし、ろくな調味料もない!
一緒にしないでください!」
思わず力説してしまったぜっ!
したらさ、教皇を含め、教会関係者3人がキョトンってな。
言われた意味が分からないみたいだ。
「ふぅ。
まずは、食材からして、違いますから。
バハラキの肉は、キチンと血抜きされていません。
それに、内臓を取り除く時に乱雑に扱い、内臓を傷付けてしまっています。
内臓を傷付けてしまうと、臓物の臭みが肉に移り、肉が台無しになってしまいますから。
さらにっ!
あなた方の言う調理人たちは、肉の熟成を知らない!
未熟成の肉と、熟成した肉は別物だ!
一緒な訳が、無いではないですか!
さらに、肉を焼いた火だ。
コレは炎では無い。
炭火でジックリと焼き上げた物なんだ。
しかも炭は白炭と言い、煙も出ないほどの品。
この白炭を造るにも技量が必要なんです。
振り掛けてある調味料にしても、そうだ。
ただの塩ではあるません。
海水に玉藻と言われる海藻の成分を溶け込ませ、レモンと言う果物の果汁を合わせた品なんです。
胡椒と言うスパイスも使っていますし、大豆と言う豆を醗酵させて造った醤油と言う調味料も使っています。
甘辛い串には、砂糖や味醂といった調味料も使用しています。
それも、ただ焼いたり調味料を使うだけではないんです。
適切な焼き方や、調味料の使い方をしないと、美味しくはなりません。
素人が簡単にできる料理じゃないんですよ。
まさに、技術の集大成なんです。
下処理もせず、塩を振り掛けて焼いた肉と、同じにしないでいただきたい!」
俺が告げるとな。
「まさか、そこまでの品であったのかやぁ。
驚いたわえ」
そうヤーヤマーサ様がね。
っか、へっ?
知らんかったの?
いや、肉の下処理に対しては告げたが、炭火や調味料については、詳しく説明してなかったか?
「この度は肉を焼いた料理で、皆さんが普段食べている食事と、対比し易くしてあります。
この料理は単純ですが、それだけに美味しく作るのは難しいんです。
それに、食材だって、人が育てたり、栽培したりしています。
品種を改良したりもです。
だから野生の動植物よりも、遥かに安全で美味しいんですよ。
根本から違いますからね!」
俺が告げると、食べていたアムズの人たちが静まりかえる。
そんな彼らへな。
「実はのぅ。
妾は、この藤吾様に、これより凝った料理を2品地走になっておる。
それはもう、絵も言えぬ味でな。
正直言って、ソナタらに招かれ供される料理が苦痛と思わされるレベルなのじゃ。
じゃからソナタらにも、藤吾様から提供いただいた品ほどとはいかぬまでもじゃ、もっとマシな料理を出して貰いたくてのぅ。
それには、まず美味い料理を知らねば、なぜ作って貰いたいのか理解できまい?
ゆえに、藤吾様へお願いし、こうして振る舞っていただいておる。
で、じゃ。
誰ぞ、美味なる料理のため、研鑽してくれる者は居らぬかや?」
うーん。
染み染みっう感じなのだが、なんとなく魂の叫びみたいな。
深刻なんですね。




