木と話してみよう!正気か!?
木と意思疎通ってさぁ、どうすりゃ良いんだよっ!
だって木だぜ?
喋りもせず、ましてや声も出さないんだからな。
無茶振りだろ?
俺が戸惑っていると、ヒルデガルデさんがな。
「木の幹へ手を当ててみてはどうかのう?
樹木医が、木の状態を確認する際に、良くやっておるぞぇ。
なんでも、木の状態が感じられるとか、なんとか。
我も試したが、我には分からなんだのじゃがのぅ?」
幹に手を着けたら、意思の疎通ができるのか?
まさかね。
不審に思いながら、言われたように幹へ手を。
!!
『助けてたもれ、助けてたもれ。
虫に侵されておるのやえ。
妾は死にとう無い』
え?
何、これ?
「もしかして・・・精霊樹さん?」
『左様なのや。
地から幹内部へ潜り込まれておる。
不埒で穢らわしい虫が居るのや』
『不埒で穢らわしいとは、いただけねぇなぁ。
オラっちは、単に食事をしているだけだぜ。
世は弱肉強食さね。
食い物の分際で、生意気だぞ』
「あー、割り込んで来た君は、精霊樹を害している虫かな?
引いて貰えたら有難いんだが?」
そう告げたらな。
『イヤだね。
こんな美味い木は、初めてだからな。
骨の髄まで、食い尽くすぜ』
ふう、引く気は無いと。
「なら、強硬手段に出るけど、良いね?」
そう勧告してみた。
『ほぅ。
出来るもんなら、やってみやがれ!』
うん、俺さぁ、こう言う身勝手なヤツ嫌いなんだよね。
いくら意思疎通出来ても、相手は害虫だからさ、駆除するのに躊躇いはないよ。
俺は転移門で自室へ。
物置へ移動して、キャンプ用品から鉄串を取り出した。
それを持って自室へと。
いや、別に自室でなくても良いんだけど、外だと誰かに見られる可能性もあるからな。
自室へ戻った俺は、転移門を操作して移動させる。
精霊樹の内部を探るように移動させると、カミキリ虫みたいな虫が居たよ。
ソイツを金串で貫いてみる。
うん、サクッと貫けたね。
生きていたら、コチラへ持ち込めない。
だが、死んでいたら持ち込める。
まあ、転移門を触っている間は、アチラとコチラは共に時が止まってるからな。
病原菌などが、コチラへ来ることもない。
精霊樹から取り出した虫を、コチラ経由でアチラへと。
精霊樹から少し離れた場所へ、ポトリってね。
虫を駆除したから、アチラへ戻ってみた。
あ、そだ。
コチラの菌とか、アチラの菌は、互いの世界へ無意識に持ち込めないからな。
っか、意識しない代物は、移動前の世界に置き去りになるようだ。
そうで無いと、部屋に敷いていた新聞紙も、アチラへ移動するからさ。
っか、意識したら移動したんだけどね。
それで思い付いたんだけどさ、物のクリーニングなんかも転移で出来たりするかも。
意識した物だけを移動させれるならさ、意識しない汚れとかは移動しないよね。
今度、試してみようかな。
さて、害虫駆除を終えたから、アチラへ戻るかな。
移動して、転移門に触れた飯、精霊樹の幹に手を着ける。
そして転移門から手を離すと。
『きぃぃっ!
なんと憎たらしい虫であろうことや。
なんとか誅伐して欲しいのやぁ!』
もう怒り心頭ですね。
分からんことも無いけどさ。
「もう駆除しましたから大丈夫ですよ。
内部には居ないでしょ?」
そう告げるとな。
『何を言っておるのや?
そないなことが・・・おらぬのや。
なぜ居らぬのや?』
戸惑ってるなぁ。
「だから駆除しましたから。
ここに落ちてますし」
「ほんに藤吾は規格外じゃな。
コレは魔虫ぞ。
普通の武器では貫くことも、斬ることも能わぬわえ。
どうやって駆除したのじゃ?」
ヒルデガルデさんが、不思議そうにね。
「それは、この金串で刺してですね」
そう告げながら、金串で倒した虫を刺そうとしたんだが。
「硬てぇっ!
なんじゃ、こりゃぁっ!」
簡単に貫いていた虫なんだが、金串では歯が立ちそうにない。
いや、どゆこと?




