セリアム界へ酪農?え?俺が教えんの?いや、料理を振る舞え?マジでぇ!?
「セリアム界へ酪農を、ですか?
ですが、酪農を行う者が居ますかね?」
育てなくとも、手軽に手に入る環境なんだからな。
そんな苦労をする者など、居るのだろうか?
「そこなのじゃよ」
え?
どこ?
いきなり、訳が分からぬことを言うヤーヤマーサ様。
困ったものだ。
「食材が、如何に大事であるかを、まずは知らねばならん!
そうせねば、わざわざ作ろうとする者はおらんじゃろう。
そこでじゃ!
藤吾様へセリアム界へ来ていただき、アムズらへ料理を振る舞って欲しいのじゃ。
キャツらが食しておる物体が、如何に不味いのか!
それを、如何に美味く食せるようにできるのか!
キャツらへ、知らしめて欲しいのじゃよ」
うーむぅ。
アムズは、生で果物や野菜を食べるか、魔法で加熱して食べるくらいしかしない。
まぁ、魔法で浄化して食すため、危険はないんだがな。
塩を振るくらいはするが、基本的に食材の侭だ。
簡単に食材が手に入るため、保存の概念もない。
気温も一定で、常に温暖だしな。
保存せずとも食材が溢れ、簡単に手に入る弊害でな、香辛料などもない。
いや、存在はするし、簡単に入手可能なんだが、誰も使おうとしないんだ。
いや、思い付かない、った方が良いだろう。
彼らにしたら、食べることは生きるための作業にしか過ぎない。
美味しくするなど、元々、彼らの概念には無いんだよ。
だから、如何に魔法を駆使して物を作るか。
より素晴らしい物を、如何にして作り出せるか。
そこにしか思考は向かない訳だ。
だが、美味い食事が素晴らしいとしったら?
ソレには技術が必要と知ったなら?
凝り性な彼らは、のめり込むだろうな。
下手したら、俺の世界を超える料理が生まれる可能もある。
まぁ、俺が調理方法や調理器具を提供し、様々な料理を食べさせたらな。
そうだ!
畜産ドラゴンを復活させて、彼らに任せてはどうだろう?
他にも、滅んだが世界には素晴らしい食材が存在した。
だが、世話の手間が大変で、環境に左右される食材が多い。
だがな、セリアム界ならば、神力と強化された精霊力が、その難易度を緩和してくれる。
凝り性なアムズならば、ソレらを育てることも可能だろう。
俺は精霊力から物を創り出すことは可能だ。
だが、それは既に存在している物だけだ。
いや、ソレをベースに、多少のアレンジは出来る。
だが、それでも、ベース範囲を超えることはないんだよ。
けどな、アムズへ任せれば、オリジナルを超える食材を産み出す可能性がさ。
そうなれば、その新たな食材はアカシックレコードへと記録される。
アカシックレコードへ記録されれば、俺は何時でも精霊力から、その食材を創造できる訳だ。
アムズたちには魔法がある。
品種改良の概念や遣り方を教えたら、魔法で色々と試すだろう。
新たなる食材が産み出されちゃう?
コレは否応なしに期待が膨らむと言うものだ。
そんなことを思ってるとな。
「実はのぅ。
童は食べると言うことは、したことがある。
このような、美食ではないがな。
ハッキリ言って不味い。
苦痛でもあったわえ。
しかしアムズたちが招いてくれるでな。
仕方なしに食しておったのじゃが・・・
もう、あんな代物を食いとうないのじゃ!
藤吾様よ。
頼み申しますゆえ、なんとかしてたもれ!」
あー
年に数回ほど、女神様方々への感謝を込めて酒宴が開かれるらしい。
ああ、酒は有る?
う〜ん、これは・・・
自然発酵の雑味ある酒ですか、さいですか。
酒を醸造する技術はないみたいだな。
あー
下処理や適切な解体をせずに、調味料は塩のみ?
しかも、生か、焼くしか、調理方法がない。
え?
そんなんで、感謝の酒宴を開くの?
マジでぇ?
そんなん、ある意味、女神様方々への冒涜やんね。
っか、セリアムって大人だなぁ。
不味いけど、わざわざ用意してくれたからって、我慢して食べてるらしい。
まぁ、料理って、そんな物って思ってたらしいんだがな。
女神様方々は優しい。
男神様方々は、食わなくとも問題ないからさ、わざわざ食べようとはしないもん。
しかし、ヤーヤマーサ様は、俺の料理を食べて我慢できなくなったみたいだ。
ま、仕方ないやね。




