帰還しました。したら、呼び出されました。なにごと?
帰るのは簡単です。
テンさんが行きたい場所へ繋げてくれるからね。
しかし、エルダードラゴンの里で過ごした時間もだが、ハクの世界が時間軸から切り離される間に過ごした時間。
これらを足したら、意外と時間が過ぎてたみたいだ。
俺が割り当てられた部屋へ帰って直ぐに、マロンさんが俺を呼びに来た。
なんだろね?
「藤吾様。
いらっしゃいますでしょうな?」
ノックの後に、そう呼び掛けがな。
「はい、居りますけど?」
そう告げたら、なんかホッとしたような気配がな。
どったの?
「なんどか、お伺いしたのですが、居られないようでしたので」
あらら、そうなんだぁー
どうやら留守にしている時に、訪ねて来たみたいだな。
部屋へはオレンジ色の光が入って来ている。
おそらくは夕方なんだろう。
思った以上に、アチラへ居たんだなぁ。
気付かぬ内に時間が過ぎ去っていて、ビックリです。
まぁ、いつまでもドアの前へ待たせておくのもなんだしな。
入って貰うかな。
「用があるなら、入って来て良いですよ」って、声を掛けたんだがな。
「いえ。
ヒルデガルデ様がお呼びでして、伝えに参りました」
だってさ。
なんだろね?
何度も呼びに来たみたいだから、直ぐに行った方が良いだろう。
「分かりました。
直ぐに行きます」って、ドアを開ける。
むろん、ドアの前にマロンさんが居るから、勢いよく開けたりはしないぞ。
考え無しのバカや、マンガのキャラクターじゃ無いんだしな。
ゆっくりと開けると、マロンさんが俺が出て来るのを察してドアから離れていた。
まぁ、当然だわな。
部屋を出てマロンさんと合流。
マロンさんのエスコートで、ヒルデガルデさんの部屋へと。
慣れねー
高校生の俺が、人にエスコートされることなんか無いからなぁ。
しかし、単に前を歩くだけじゃ無いんだな。
俺の右斜め前を、俺の歩調に合わせてな。
前と、後方の、俺を確認しながら歩いているんだよなぁ。
結構大変なんじゃぁ・・・
とてもではないが、俺には真似できないと思う。
ん?
今の俺なら可能?
そなの?
後方確認しなくとも、察知能力にて全てを把握できるまさため、目を閉じていても行える?
あ、そかぁ。
別に目に頼らなかったら、俺にも可能なんだな。
視界て言うのは、意外と見える範囲が限られる。
そのため、周囲を確認するには視線もだが、頭や身体を動かさないとならない。
しかし、露骨にキョロキョロしては下品であり、エスコートする者がして良いとは限らない。
さりげない確認をさぁ。
ただ、相手を確認する所作は必要らしい。
それが例え、察知能力で辺りを把握していたとしてもだ。
それは、エスコートされている者のためらしい。
勝手にスタスタ歩かれては、本当に自分を案内してくれているのか、不安になるからさぁ。
だから、アナタをキチンと案内してますよ、っう意思表示を含めて、相手の確認をな。
いや、エスコートって、案外と難しいんだなぁ。
そんなマロンさんのエスコートで、ヒルデガルデ様の部屋へと。
同じ建屋だし、そんなに離れてないから、直ぐに着いたよ。
この距離ならエスコートなど不用なんだが、准貴族とは言え貴族らしい俺を迎えに行った使用人が、エスコートもしないのは不敬となるらしい。
うわ、面倒くさい!
まぁ、そんな訳でエスコートされた訳だな。
これ、俺がしなくて良いったら、マロンさんが咎められることに。
平民と貴族の間には歴とした格差があり、あまりハメを外すと問題となるらしいな。
まぁ、ヒルデガルデ様は、その辺を気にせずに行動する型破りな方だ。
だからヒルデガルデ館では、あまり煩くは言われない。
だが、宿とは言え人目がある場所だ。
しかも、俺がドラゴンの攻撃をも防ぐ結界を張ったことが知れている。
その状況で、エスコートせずに、使用人のマロンさんが歩いていたら、集落の者が騒ぐ可能性が。
いらぬトラブルは不用だから、しかたないか、ふぅ。




