あー、里長?結局、そうなるのね。
結果なんだが、車が急に止まれないように、人間も急には変われない。
当然のごとく。
「ハッ。
代々続く名家である我が家から里長を外すなど論外。
バカを申すでないわっ!
で、こわっぱっ!
この騒動の原因を作った償いを、いかにする!」
あ、おばちゃん、終わったぁー、の、お知らせ。
「ふむ。
警告は聞き入れなかった、っと?
では、現在をもって里長の任を解きます。
異論は受けません。
集落の総意ですので」
門番さんが告げると、警備兵が複数人現れたよ。
「な、なにごとかっ!?」
いや、自爆したことに、気付いてないよ、この人。
特権で好き放題し過ぎたんだね。
まったく慕われてないみたいなんですけど?
「この家は里長へ与えられる家であり、集落の共有資産である!
里長でない者へ貸し与えられる物件ではない。
私財を持ち出し退去せよ!
期日は3日。
それを超えたら、強制退去となる。
なお、持ち出しには監査人を同行させる。
家の飾りなどの絵画、彫刻は家に付随する物。
持ち出しは禁止とする。
以上!」
あー
最後通達を受けちゃったかぁ。
まぁ、80%の確率で、こうなるのは分かっていたんだけどね。
「うそぉ!
ヒルデねーさん、助けてぇ!」
いや、今さらヒルデガルデさんに泣き付くのか?
ヒルデガルデさんの種族であるシルファーナ族は長寿だ。
だから里長が幼い頃から知っている。
たびたび諌めていたようだが、バカな里長は、それを疎ましく思っていたようだな。
ほんとーにぃ、自業自得だなっ!
「こうなっては、我も、どうしようもないわえ。
じゃから態度を改めよと申したじゃろうに」
困ったようにな。
まぁ、若い頃ならなぁ。
この歳まで拗らせてんじぁ、仕方ないだろ。
なんかさぁ、里長への挨拶だけのハズが、大騒ぎになってんだが?
なんで、こうなったし?
後の話しは集落側の問題だ。
ま、結界は設置の侭って決まったから、後は任せよう。
「ふぅ。
いずれは、こうなると思ってはおったのじゃが。
ヤレヤレ。
なぜヒューマンは、こうも愚かになれるのじゃ?」
ヒルデガルデさんが、悲しげにな。
彼女が幼い頃は、ヒルデねーちゃん、って慕っていたみたいだ。
そんな彼女が成長すると傲慢にな。
なんども諌めたねだが、反発されたらしい。
まぁ、周りのせいもでもある。
甘やかせて、チヤホヤし過ぎたんだ。
それで我儘にな。
良くある話しではあるが、それが集落の長では務まらない。
この度の件は、仕方なだろう。
さて、これからなんだが。
実は逗留先は決まっている。
何時も使う常宿があるそうだ。
タルトさんが、既に部屋を借りに行ってるよ。
精霊さん達を含めると15人の大所帯なんだが、実は精霊さん達は宿には泊まらない。
っか、眠らない。
食事も不用だからな。
食べる行為は娯楽に過ぎない。
だから、食べなくても問題は無いんだ。
で、この世界の食べ物は、アレなヤツね。
いやさぁ、俺が提供したケーキを食べる前なら問題なかったんだろう。
だが、あの味を知った後ではなぁ。
後で食事を出そう。
で、結局、宿へ泊まるのは、5人だな。
ヒルデガルデさん、オーデットさん、マロンさん、タルトさん、俺だ。
部屋は2部屋借りる。
ヒルデガルデさん用と俺のだな。
ヒルデガルデさんの部屋へは、隣接して小部屋が5つ付いているタイプだ。
コレは使用人が使用するための物だな。
俺も、ソチラで良い、ったんだがなぁ。
「藤吾は、我の弟子であるのじゃ。
そのような扱いが出来るハズあるまいに」って、呆れられたよ。
なので、1人部屋を。
いや、1人部屋なんだよね?
広いし、付属する小部屋が3つもある。
いや、コレさぁ。
お貴族様が泊まる部屋じゃね?
だからヒルデガルデさんの部屋へ行ってな。
「僕の部屋、ヤケに豪華なんですが?
アノ部屋で間違いありません?」って、確認を。
したらヒルデガルデさんが呆れてな。
「貴族が逗留する宿じゃぞ。
アレ以下の部屋など、ありはせぬわえ」って、言われたよ。
いや、俺、貴族じゃ無いんですが?




