第8話 プラセンの商人
土日は午前と午後の2回予約投稿の予定です。
実践訓練ということで、武器や防具以外は、バックパックだけの装備のふたり。
まず、西のメンリオ村へ向かう。
朝8時に屋敷を出て、昼の2時。
休憩として先ほど狩ったウサギ肉をサラが焼いてくれる。
もちろん、着火にはファイヤを使うし、ウォーターで水も出す。
火が付く木の判別に慣れれば問題は無い。
基本的に荷物はバックパックに入れているのだが、地球からの持ち込み品はベルトのウエストポーチ(マジックバッグ)に入れてある。
若返ったせいで、バックパックの置忘れは心配ないが、念のために装着を外さないベルトの方が安心できるからだ。
夜9時にメンリオ村の近くの森に到着し、村のようすを偵察する。
森の中ではドローンは飛ばせないから、2万円で買ったナイトビジョンで見てみよう。
「お~ この暗闇でも結構明るく見える!」
外に人がいない事を確認できたので、森の中で火を起こし食事の用意をする。サラは私と交代して、暗視スコープで村のようすを監視している。
演習だからという事もあり、サラとふたりだからデートみたいな気分だ。
今までの人生で、これほど楽しい事を経験したことが無い。
『川で行水』イベントでもあるのかと期待したが、常にクリーンの魔法で除菌を行う処理が常識のようだ。
交代で見張りをするため、一緒に寝ることがないため、私の寝袋を交代で使う。
サラはブーツを履いたまま、乗馬用キュロットの腰部分までを寝袋に入れて、上半身を出したまま眠る。
7月が夏なのはこの世界でも同じだが、寒暖の差はそれほど大きくない気がする。
私は上半身にプロテクターベストを付けたままだ。
さて、朝になったので訓練を終え、帰ることにしよう。
実践訓練は、周辺5つの衛星都市への偵察任務だが、引き続き、バダホースまでの90Kmを2日掛けて行って来た。
半分は森林地帯で、半分は平野だった。
そして次は北のプラセン市までの80Km。
川沿いと森林の2つのルートがあるのだが、今回は川沿いのルートで進んだ。
この川沿いのルートは、馬車が通る交易のメインルートでもある。
途中3分の1の所に湖があって、冒険者や商人のキャンプ場所にもなっている。
川の流れが湖に吸収されるため、豪雨が有っても街道がぬかるむ事はない。
偵察任務の訓練だから、馬車道の左右の草むらを進んでいるのだが、今回はプロテクターベストにトランシーバーを付け、骨伝導イヤホン、そしてピンマイクを使っている。
獲物を見つけるたびにお互いが連携して狩り、血抜きの間、ティータイムにしている。
今回が3回目の実践訓練で、すでにサラとはチームとしてお互いに信頼感ができていると感じている。
湖のキャンプ地に近づいた時、それまでの楽しい雰囲気をぶちこわす金属音がした。
『ガキン!』
『カキン』『カキン』
『ガキン!』
金属が衝突する重い音や、軽い音、時には罵声が聞こえる中へ飛び込んで行ったサラ。
だが、私には接近戦をする勇気はない。
戦闘場所から20mほど離れた所から、とりあえず背中を向けている者のお尻から下を狙って弓を放つ。
『パシッ』
『パシッ』
「ぐあ~」
山賊のような大男が両手剣を投げ出した。
成功だ。
矢が飛んで来た方向に見当を付け、こちらに向かってくる2人の男。
同じくお腹から下を狙う。
『パシッ』
『パシッ』
見事に太ももに刺さった。
既に夕暮れで、矢が見えにくいのだろう。
『パシッ』
『パシッ』
今度は見事に2本命中していて、うち1本は腹に刺さった。
内臓に損傷を受ければ、この時代、助からないだろう。
そんな思いから、下半身を狙うのだが…。
弓を手放し、腰ベルトに吊るした90㎝の18-8ステンレス製の片手剣を持った。
ベルトホルダーのTC20高輝度ライトを左手で逆手に握る。
今回は左腕に丈夫な毛皮の籠手を付けている。
18-8ステンレスの片手剣は、リサイクルショップの倉庫に眠っていた装飾用の剣だが、砥石で研いで刃を付けてある。
早足で戦闘場所に行くが、数名が戦闘不能になり倒れていた。
夕暮れの中でも一応、人の姿は視認できる。
馬車道の左側から切りこんでくる足音を感じ、高輝度ライトのフラッシュ光を当て、目をくらませると同時に、剣を持つ右腕に切りつけた。
腕を切断する事はできなかったものの、相手が剣を手放したので良しとし、右側へもライトをフラッシュさせる。
例の大剣持ちが振りかぶっていたところだった。
体が伸びきった体勢の大男めがけて、剣を突き刺すように突進した。
剣が刺さる感触を感じたが勢いは止まらず、そのまま剣を押し込みながら、道路脇まで大男を押し倒してしまった。
男の身体に乗ったまま剣を引き抜くと、血がどっと出てくる。
壮絶な初体験だが、それほど血を浴びていないせいか、意外と平気だった。
とにかく、サラが心配で頭が一杯なのだ。
今、彼女を失ったら…。
きっと、人生最大の後悔をするだろう…。
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