第7話 訓練
土日は午前と午後の2回予約投稿の予定です。
サブタイトルと本文の重複を修正しました。
聖域暦 157年3月
この聖域暦が広く使われている訳ではないが、カセレスで発行される文章や記録には必ず記載されている。
学園のスタートは9月からだそうだ。
4月に始まるのは日本だけなのかな…などとどうでも良い事を考えていた。
「リハビリ期間が終わりましたから、今日から学園の1年で身に付ける基礎訓練に取り組みましょう」
ベッドで過ごした間は、座学ばかりだった。
1か月経って、やっと体を動かすカリキュラムになり、サラの表情も明るい。
屋敷の1階にある『調整室』という部屋に来た。
「まずは、肉体の能力の把握から始めましょう」
そこには各種の武器がずらっと並べられていた。
調整室…何を調整するのかと思ったのだが、初代マクダネルが新しい槍、剣、弓、盾を使う時の感覚を調整する部屋だった。
だが私は初めて武器を取り扱うため、まずは初代の映像を見て型を覚えるところから始まる。
肉体は初代のコピー品であり、初代と同等性能になっているらしい。
そのため、スキルとして「槍術」「剣術」「弓術」「盾術」を身に付ける事になる。
武器を持ち、基本の足さばき、ステップから。
スポーツが特別に得意だったわけではないのだが、記憶域にすんなりと入ってくる。
やはり脳のスペックが、肉体のスペックが違うことを実感している。
基本のステップが終わると、今度は弓の照準合わせ。
驚いた事に、弓を引いた姿勢がピタッと決まる。
しばらくすると、壁に的の映像が現れて、その的に向かって放つ。
入った部屋は10畳ほどの広さだった筈だが、的までは20mあるように感じる。
何度か放っている間に、照準が調整されていく…ほとんど無意識と言える。
最終的には動いている標的に当てる訓練になるらしい。
最後は丸盾を使って様々な方向からの剣を受け止め、流す。
はっきり言って、斬り合うことは最大の恐怖心を伴う。
今日、実際に刃の無い剣でたたかれてから防具の重要性を思い知った。
それから1か月が経過したころ、弓術の習得率は50%になり、終了になった。
あとは学園や実戦で習得することになるらしい。
「槍術」「剣術」「弓術」「盾術」が各2時間だったのだが、弓術が終わったことで、訓練は3時までになり、あとの2時間は生活魔法になった。
メイドを選んだ時点で、生活魔法は使えないと思っていたのだが、そうではないらしい。つまり、副賞の生活魔法とは、いきなり魔法を使えるようにする事だったようだ。
はっきり言って、この肉体は下級神マクダネルを若くしたもの。
スキルなどは失ったものの、元々魔法を使っていたのだから、訓練すれば使えるに決まっていた。
6月になって、槍術が60%習得になり自習は終了。
生活魔法もライト、ファイヤ、ウォーター、クリーン、そして部屋のほこりを集めて、窓から外に排出するウインドが使えるようになった。
剣術の訓練は、長剣、短剣、ナイフまでが含まれ、習得する技術の範囲が広いことが特徴で、3か月経った今でも終わりは見えない。
特にナイフでは盾代わりに受け止める事もするし、投擲や動物の解体技術も含まれる。
一方、盾術では、大盾や丸盾の基本を習っただけでやめている。
理由は、丸盾を背中に背負って歩くわけではないし、最悪、籠手を使用したいからだ。
そんな理由で、剣と体術は継続して訓練する事にしている。
学園に入るまでの残りの課題は、実践訓練だった。
地図の見方、キャンプの実施、いわゆるサバイバル訓練だ。
でも鍋を持って行くわけにはいかないだろう。
屋外で調理をしたことも無いし…。
「サラも一緒に行ってくれるのかな…?」
「もちろんです。最低でもふたりで行動するのが基本です」
「そうかー。これで小説みたいにマジックバッグがあればいいのにね…」
「ありますよ。バックパック程度の荷物は入ります」
「あるのか!…じゃあ、カップ麺くらいは持っていけそうだな~」
「訓練時には、携行食は不可です」
「ははは…そりゃそうだよな。でも、せっかく糖尿病の心配がなくなったのにな~」
「訓練が終わったら、一度食べさせて下さいね」
「もちろん!」
ときおり森の中へ入り、小動物を狩り、さばいてタッパーに入れてからバッグに。
「何ですか?それ」
「落としても割れない便利な容器だ。ひとつ渡しておこう」
縦型の四角いタッパーで、冷蔵庫に入れるのに使っていたやつだ。
まさかこんな用途に役立つとは思ってもみなかった。
お読み頂き、ありがとうございます。
『この作品を読んでみよう』とか、『面白そう』とか思われた方、
是非、ブックマーク登録や、いいねボタンをお願いします。
励みになります。