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第58話 実行支配4(ラモス視点)



回答書の内容について、領主が理解できていない事と、相棒ロラにも採用の件を伝えたと報告すると、私はロラと交代しマリアさんとの短い会話で、ロラはムセンキの使い方を習得したのだった。


これで今日の任務は終わり、緊急事態発生時以外は、連絡は無しと言われた。


カセレス連合マリア部隊は、出来高払いではない。しかも、活動経費は認められれば賃金と別に支払いがされる。


経費とは、移動費、宿泊費、物品購入費、衣装代、情報収集のための飲食費などである。


「それって、ほとんど経費になるって事じゃない」


「いや、通常の飲食費は、潜入先でも自分達の払いになる」


マリアさんから聞いた説明をロラにしただけなんだが、結構、うれしそうにしている。

だが、経費の精算には、細かい記録が必要になるため、メモ帳と鉛筆、マジックバック小が私に支給されている。


この夜、『いずれ近いうちに結婚しよう』と告白した。




翌朝6時の鐘で目を覚ました。この日はいよいよ陽動作戦の始まる日だ。

昨日、マリアさんはコルドバで兵士を借りて、セビーリャ近郊で事件を起こす手筈だ。

そして私は、異常事態を領主に報告する係り。


東と南、2か所で煙が上がる。ロラは昨夜、南側の発煙を頼まれていた。

実際には藁束などに火を付けて、煙を上げるだけだ。

特に実害は無い。


9時の鐘で実行され、東側で結構大きな煙が上がっている。


「領主さま、大変です!」


私が屋敷に飛び込み、大声で異常を告げる。

ダイニングから飛び出てきた領主アルモンテ。

ここには小作人の家から連れて来て、領主や息子の餌食になった娘達が、メイドや下働きとして働いている。


「なんだ、何があった?」


冒険者の宿舎になっている大部屋からも、7人ほどが出て来た。


「東側の街道で煙が上がっていて、そこから逃げて来た小作人の話では、4、5人の兵士が作物を徴発しているそうです」



「なに!おい、お前達、状況を見て来い!」


4,5人と聞いた冒険者達、といっても彼らはごろつきだが、7人が武器を片手に飛び出して行った。


通常なら、3人一組で小作人を脅すのだが、兵士5人と聞けば、同数では心許ないのだろう。だから7人全員で行ってしまった。


だが、まともな装備の冒険者が2人、もう一つの大部屋から出て来た。

新人か…遅れて屋敷の外に出た2人だが、すぐに戻って来て


「南側からも煙が上がっています!」



「なんだと!お前達は南へ行って確かめて来い!」

「くれぐれも不審者を屋敷に近寄らせるな!」



新人2人と外へ出た私は、新人を南へ走らせ、ムセンキで陽動完了を伝えた。


すると5分もせずに、10名ほどの連合軍兵士が独特の服装で、西側からやって来た。

兵士が来たのは、西側を流れる川から、小舟に潜伏して下ってきたのだろう。


屋敷の制圧はあっという間に終わり、領主と息子の商人は結束バンドで後ろ手に縛られ、連れて行かれた。

そして領主親子はその小船に乗せられ、川を下り、バラメダ港からそのまま沖合に流されるらしい。


後ろ手に縛られ、脚を縛られ、猿ぐつわがされている領主親子。

その上から、隠蔽のためのぼろ布がかぶせられているのだから、助かる事は無いだろう。


この親子に夫人はいない。

貴族でもないし、つねに小作人から、その時限りの愛人役を調達できるからだ。


だが、この地で搾り取れるものは、小作人が作る麦と野菜類のみ。

商人からの交易品が無ければ、ひどい生活とは思うが、彼らはこれで満足していたのだから不思議だ。


マリアさんが、この領主館の人達を集めて演説をした。


「私はカセレス連合のマリアだ。このセビーリャ領の新たな領主になった。だが、このセビーリャは、これからは農業学校になる」



内容としては、土地は全て学校が所有するのは以前の領主と変わらない。

小作人は同じく農業によって生計を立てるのも同じ。

ただし、税は要らない代わりに、全て学校が買い取り、一括して販売する。


世帯の就労可能な人数によって、耕作地が変更される場合がある。

また、一部は試験農場として、学校が直接管理をする場所がある。

小作人には、学校で基礎教育を受ける権利がある。


いま屋敷にいるものは、学校の職員として雇用する用意がある。


などと、発表され、理解できない者はカセレス兵士から、再び説明を受け、納得した者は契約書にサインをしていた。



そのころ、東に行ったごろつき達はコルドバの兵士に捕まり、連れていかれていたそうだ。

そして、南に行った新人の2人は、ロラと共に戻って来て、兵士から説明を受けていた。


この後は、小作人を順に呼んで、説明と契約をするだけだ。




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