第45話 使徒という仕事
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ブルゴスからビルバオまで150Km、途中カンタブリア山脈寄りの道を偵察しながらの旅であった。
冒険者のデービッドが集めた情報から、ロメーロ氏が連れて来た戦闘団は、例の教会系の戦闘団で、150人くらいだと推定できた。
デービッドがロメーロ城内の訓練施設を見学する事が出来たのは、常に団員を募集していて、元冒険者たちによる職業兵だったからだ。
部分的な金属鎧を着たまま行軍ができる体力はないのだが、全員盾と鎧を付けて壁になれるように訓練をしていたらしい。戦闘団は威圧効果を狙っているのだろう。
鉱山までの道中で、戦闘団らしき者を乗せた馬車が森の近くで野営をしているところに出くわしたが、みんな鎧を脱いでいて、動物を仕留めて食糧にしているようであった。
元が冒険者だけに、歩きの我々3人組と雑談したり、情報交換をするのは何の問題も無かった。
弓使いのマルタは女の冒険者はどうするのか?と聞いたところ、城内で炊事、洗濯、料理などができるなら、夫婦者でも雇ってもらえると言われ、ふ~んと、まんざらでもない返事をしていた。
教会が雇用主で半年契約。給料は安いが宿舎も有るし、女は教会に薬師として雇ってもらう事も可能らしい。だが実際には食料の配給は心許ないようだ。
今のこの世界、食糧の確保が最も重要な課題なのだから、当然といえば当然であった。
カセレスの貨幣なら別だが、フェルナンデス貨幣は信用が無くなってきていて、使える相手が限られているからだ。
1週間ほどでビルバオ市に到着したスサーナたち。途中のようすから6人がひとつの小隊になって、6組ほどが常時、金鉱山及び途中ルートの見張りをしていると思われた。
ビルバオ市の防壁に並ぶこと1時間。結構厳重なチェックをしている。
私たちの番になったところで気が付いたのだが、見知らぬ門番ばかりだ。
おそらく、新たに自治権を得たエルシド氏が領主になり、その関係者がこの都市の役人に代わったのだろう。門番や守備隊も変わってしまったに違いない。
スサーナのデータには、前領主の本拠地が隣町のビトリアであると記録にある。とにかく、冒険者ギルドで情報を得よう。
同じころ、エボラ領ではマリアがルイスの所在を突き止めていた。
かくまっている自警団長はルイスの叔父であった。
自警団は自主的な組織であるため、ある意味、お金の力が物をいう。
サラの予測通り、4~5年分の税金を持ち逃げした祖父は、この金で地域の福祉に貢献し甥を団長に就任させたのだった。
また、メイド(愛人)に産ませた息子にも、同様の手口で団長の座を手に入れさせた。
この叔父も悪い事に頭が働く男で、バダホースに潜入させた縁戚者に盗みを働かせたり、立場を利用して武器取引の中間マージンを得たりしていた。
また、叔父の自警団長は、職権を利用して捕まえた怪しい者を匿い、時に裕福そうな家に派遣してその盗品をピンハネしていた。
時期が来るとこの泥棒を捕まえて手柄を上げる一石二鳥のマッチポンプが得意技であった。
これらの悪事の状況証拠や証言を得たマリアが、サラに連絡を取り、初代の了承のもと、処罰が下された。
3名の自警団長がマリアに呼び出され、密会現場である地下室で、多くの宝飾品を奪い合い殺しあった。
一方、マリアからの密告の手紙を受け取ったカルロス隊長は、ビキニアーマーのネレア中隊長率いる第一小隊と共に現場に到着し、さまざまな証拠品を押収した。
次の日、自警団長の愛人が、知り得る限りの過去の悪事を自白する手紙を残し、姿を消した。
カルロス隊長に入った情報によれば、深夜に町を出る母子が目撃されていて、その特徴から、母親は自警団長の愛人と断定されたが、この愛人には娘はいない。
娘の身元は分からなかったが、その特徴はマリアに似ていた。
以降カルロス隊長は、自警団の解散を発表するとともに、ロキに『マリアという女性を知らないか』という手紙を送って来たそうだ。
回答には『私の密偵に手を出すな』と書かれていて、ようやく、事件の全体像を理解したカルロス隊長であった。
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