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第40話 エボラの防衛隊


「もしかして、何の組織もなく、何の訓練もしていないという事ですか?」


「い、いや、これからだ…」



「聖域カセレス連合は、経済的にも軍事的にもゆるやかな集団安全保障同盟なのです。何か危機的な状況になった時に、お互いに助け合いましょうという同盟です。連絡する相手がいなくてはどうにもなりませんよ?」



「そ、そうだな。早急に体制を整えるようにしよう」


ここからは、サラが条約に関する説明と署名確認を行うのだが、私はやる事がないため、2男カルロスとともに城の護衛部隊のところへ見学に行くことにした。


「カルロス殿、あの露出度の高い給仕たちもいるのでしょう?」


「えっ、どうして分かったのです?」


「給仕にしては筋肉が付き過ぎですよ。普通じゃない」


「ははは、そりゃそうですね…あの娘も中隊長ですからね」



「用心のためとは言え、武器を携帯した戦闘員を配置したのは不味かったですね。サラが怒るのは無理のない話です」


「はい。申し訳ありませんでした」




マクダネルとカルロスは、防衛隊の訓練を眺めながら話をしていた。


「彼女達を偽装させてまであの場に配置したのは、連合加入に反対する勢力があるという事ですか?」



「…はい。ご推察の通りです」


「今日ご指摘頂いた通り、城の防衛隊以外は全く組織化されておらず、市内は地域ごとの自警団頼みなのです。なかでも、3男ニコライがバダホースを勢力下に取り込めると喜んでいた自警団長が数名いまして、頑なに連合傘下に下るのか、と言って反対していたのです。」



「それで?」



「ところが肝心のニコライと連絡が取れず、ベージャ領主グティエレス様やベアトリス妃からの催促もあり、連合入りを兄が決断したのです」



「なるほど、では私達自身でも警戒が必要でしょうから、その自警団長たちの名前を教えていただけますか?」



「はい。では後ほどメモでお渡ししますが…しかし、そこまで警戒する必要は無いでしょう」



「いいえ、連合への加入を妨害するためにテロ行為を行う可能性もありますよ」


「テロとは一体なんです?」


「そうですね~ 例をあげれば…、今回、『泉のほとり亭』という宿に泊まったのですが、あの宿にマリアさんという腕のいい料理人がいました」


「えっ、泉のほとり亭のマリアさん?」


「知っているのですか?」


「い、いや、ちょっとだけ…」


「私達が泊まっている泉のほとり亭が火事になり、主人夫婦と宿泊客数名が逃げ遅れ、焼死体で発見されました。逃げて無事だったマリアさんが放火の疑いで、自警団に捕まりました」


「まさか…」


「そうですよね?まさか彼女が…でも自警団は『マリアは店主と女将さんを恨んでいる』と証言をする人物や、『店主達に復讐をするために最近潜り込んできたらしい』と証言する人物を複数用意していれば、誰も反論できないでしょ?自警団なんだから」



「つまり、私達を消すために、店主と女将を殺し、宿に火を付け、マリアを犯人にして捕まえる。こんな事ができるのは治安維持の部隊である自警団しかないのです」


「カルロス殿、こんな場合のマリアを、あなたは助ける事ができますか?処刑を止める事ができますか?」


「確かに…止める事はできないでしょうね…」


「このようにして住民を分断し、対立させて、反体制の道具にされるのです。争いは軍隊が押し寄せてくるだけではない、という事です」



「まいったな~、どうすりゃいいんだ…」


「防衛隊を組織して、町の巡回をさせて自警団の上位組織にする事、自警団の単独判断で処罰は下せないように規定を作る事でしょうね。あとは、ただで使える自警団を解体し、防衛隊を拡充させる事でしょう。要はすべてカルロス殿の配下に入れる事です」


「は~、そうするしかないか…」



「訓練なら、多少は協力できますよ。さっ、行きましょう」


連合加入の手続きなど全く気にせず、防衛隊の訓練場に向かう二人。


カルロスが訓練場に入ると、楽しく訓練していた防衛隊の者達が一斉に敬礼をした。


遅れて入るマクダネル。

そして一声。


「今日、エボラは聖域連合に加入した。そして、このエボラの防衛隊司令官にカルロス殿下が就任された」


「うわ~ やった~」



「これからエボラの防衛は私カルロスが責任者として運用していく事となった。よろしく頼む」


そういってカルロスは敬礼したが、防衛隊は整列さえしていない烏合の衆だ。

先が思いやられる…。


「カルロス殿、まず、彼らを得意武器で分けてもらえないでしょうか」


「了解した」




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