第39話 バダホースの泥棒
平日は17時と19時の2回予約投稿の予定です。
サラの予想通り、新村長に成り損ねたルイスはエボラの町に逃げ込んだ。
おそらく4、5年分の税を持ち逃げした初代村長が逃げたのもエボラの町だったのだろう。
料理人をしているマリアの宿屋へ行き、部屋を確保してから、朝食を運んで来たマリアにさりげなくメモを渡すサラ。
「ごゆっくりお召し上がりください」
厨房に引っ込んだマリアが、メモを一読する。
『バダホースから逃げたルイスを追っている。彼の祖父は村の税金5年分を持ち逃げしてエボラに逃げたと思われる。10年前の事だが、大金で官職を買った可能性もある』
メモをかまどの薪に入れて
「ご主人、お茶をお入れしましょう」
「あぁ、マリアちゃん、気が利くねー、ありがとよ」
「ご主人、あたしはもう21だよー。ちゃんは勘弁して!」
「そうかー。そろそろ相手を見つけんとな」
「でも、いまが一番稼ぎ時なんですよ」
「そういやぁーカルロス坊ちゃんも、マリアちゃんに気がある感じだったね」
「悪女だねぇーまったく…領主家を手玉に取るなんて、あたしの時代には考えられなかったよー」
「あはは!女将さん、いくらなんでも悪女はないよー。まだ何にももらってないってば!」
「そうなのかい?2男坊は遊び人なんだから、精一杯搾り取ってやんな!ははは」
マリアはムードメーカーのようで、引っ込んだ厨房の中は笑い声が絶えず聞こえている。
その後、町の中を歩き回り、町の人の会話を聞いて回ったが、連合加入の話は全く出ていない。
ルイスの潜伏先がそうそう簡単に見つかるとも思えないし、ベージャでは連合加入の結果を聞かれるだろうと思い、先に条約の締結をしておこうと考えた。
昼過ぎ、城壁の警備門番へ
「領主に面会に来た。聖域カセレスの宗主マクダネルだ。」
「は、しばらくお待ちくださいませ。」
まもなく、城内から人がぞろぞろと出て来た。
先頭の領主アルベルトが、手を振っているが、子供じゃないんだから手を振り返す訳にはいかない。
「申し訳ない、待たせてしまった」
だが、領主以外の者は、城に続く道の左右に分かれて起立の姿勢だ。
遅れて降りてきたのが2男カルロスだろう。日焼けしていて色が黒い。
「ようこそおいで下さいました、私はエボラ領主アルベルト家2男のカルロスと申します。どうぞよろしくお願い致します」
「ロキ・マクダネルです」
「サラです」
ほんの一瞬だが、カルロスの視線がサラの腰あたりまで落ち、さっと上まで舐めていったのが分かる。
本人の気持ちはどうか分からないが、これがこの2男の評価につながっているのだろう。
「では、どうぞ城に…」
案内された内部はごく普通の屋敷であった。
おそらく簡単に石垣で囲って、外見を城にように見せているのだろう。
普段は使ってなさそうな会談室に入ったのだが、長テーブルがあって、会食会場として使われているのだろう事が分かる。
「どうぞこちらへ…」
横から露出度の高い服装の女性が出て来て、席に案内される私とサラ。
「これはこれは…」
我々側に2名、領主とカルロスの側にも2名の露出度の高い給仕?が付いている。
「悪いのですけど、お色気サービスは目障りですので不要に願います」
サラの要求に、露出度の高い服装の女性がうろたえていたが
「もういい、お前たちは下がれ。マクダネル殿、こちらの都合で失礼な事をした」
「ではサラ、聖域連合への加入手続きを頼む」
「はい。ではまず、連絡体制構築のため、エボラ領の担当官をお教え願います」
テーブルに広げられたのは、エボラ領の国内体制を把握するためのチャートであった。
治安維持体制、軍組織の統括、現場司令官、補給を希望する場合の規模など。
住民登録がされれば、支援物資の規模も計算できるようになる。
「まず、市内の治安維持担当はどなたですか?」
「えっと、それは犯罪の取り締まり部隊だな?」
かろうじてサラの質問に答えているが、そんな担当などいない。
「防衛隊、つまり、グランドラやリスボンから侵攻があった場合に対応する部隊の隊長はどなたですか?」
「えっ、みんなで守らねばならないと、武器類を調達したばかりだ」
「城の防衛隊は?」
「そこは私が指揮官だ」
「まさか、アルベルト様が先頭に立って?矢に打たれたらどうするのです?せめてカルロス様でしょ?」
「ああ、確かにそうだな、カルロス頼むぞ」
「お、おう!」
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