第36話 実力部隊構想
翌日、朝早くにサラが寮にやってきた。
(相変わらず、きれいだ…)
こんな時にこんな事をいうのは何なのだが、私はサラの腰からお尻にかけての曲線が好きだ。
いわゆる寸胴ではない。
「ロキ様!何なんですか! 朝からサラをじっと見つめて…」
「あっ、すまない。つい…」
「うふふ、いいのですよスシ。私はボーとしているご主人様も好きですから」
「う…ところで、どうしたのかな?」
「マリアの件で、ご報告があります」
はじめてこの世界に来た時に、専属メイドの候補者として見ただけで、正直に言って覚えていない。派手な印象のスサーナと、子供のようなアナは記憶に残っていたのだが…。
「マリアか…顔が思い出せないけど…なにかあったのかい?」
「スシのフォローで北東のビトリアに行っていたのですけど、リスボンの船がビルバオに入港したという話を聞いて、料理人として船に乗り込んだそうです」
「おお!それは凄いな。それほど料理の腕が良いのか?」
「いいえ、船で食あたりが出て、料理人が総入れ替えになったそうです。彼女は風の魔法も使えますので、それが決め手だったと本人の報告にあります」
「あー、帆船だから風が自由に操れるなら、大きな戦力になるだろうな」
「はい。それと、エボラ領主アルベルト家の2男、カルロスという人物と接触したとの事です」
「マリアには、エボラ領主3男の学園潜入事件について伝えてあるの?」
「マリアはこれからリスボンに偵察拠点を変更するとの事でしたので、リスボンで手紙を渡せるように手配を致します」
「わかった」
サラが言うには、5人の使徒間での情報交換は定期的に行っており、それにより各自の無事を確認しているそうだ。
本格的な秋になった。
この地の気温は、それほど大きな変化は無く、暑くても30℃弱、寒くても10℃くらいだ。
何気に見ていた初代マクダネルの気候観察記録だが、この惑星は以前、今よりも自転速度が速く、また衛星との距離も近かったらしい記述がある。
実際には衛星の引力の影響なのかは定かではないが、吹き出したマグマやガスの影響で、すぐ東の大地には大量の火山灰が降り注ぎ、CO2による気温上昇もあって、人類の生存に影響を及ぼしていたらしい。
そのために、火山のある大陸と、その西側の大陸を切り離し、地球の西ヨーロッパ大陸に似せた地形の地域に整備した…という記述が出てくる。つまり、地形は人工的なのだ。
この記録を信じるならば、天災を少なくして、人口を増やせたとの解釈ができる。
下級神が地上に降りてからも、使徒によって地表の植物分布や水源の確保、生き物の再配置や食料源の再配置を行ってきたとの記述は、この大地がスペインを模して調整された平野多めの大陸である事を示唆しているのではないだろうか。
「学園には行かないんですか?」
「う~ん。やる気が出ないんだ…」
「スシが可哀想ですよ、ひとりぼっちで」
「そんな事ないよ」
スシは、あの戦闘術の教師たちをまだ信じられなくて、指導者みたいな事をやっているのだ。
だが、私は本当に少し疲れていた。
「じゃ~学園に行ってくるよ」
半日、学園をサボれたんだし。
そう思って、昼過ぎの学園に来た。
どうやら新しいカリキュラムは、良い刺激になっているようだ。
1年生は自らの村の歴史を調べ、自尊心を強くしているようだし、戦闘訓練にも熱心に取り組んでいるようだ。
的に当てる事ができない1年生…弓は難しいんだよな。
2年生は専門課程に入り、畜産、林業、農業、木工、鉄工、縫製、薬学、料理、陶芸などの職人を目指し、また、重歩兵との戦闘訓練で連携、相性など戦術を学ぶ。
3年生はほぼ、自衛手段を得て、自らの進路に向けて自己研鑽をしている者ばかり。
私は、彼らを対象として『カセレス連合軍』を作れないか?と考えていた。
交換所構想は経済支配の要、そして連合軍は武力支配の要だと考えたからだ。
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