第30話 交換所
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翌朝、朝食後のダイニングにて、ベージャの農業振興により経済規模が大きくなった分、貨幣が不足したのではないか?という質問をしたところ、大変に驚かれた。
それは3年前の農業地の拡大以降に、野菜を中心とする産品が豊富に収穫できたため、市中の流通量は増えたのは良いものの、市民の貨幣保有量がそのままだったため、多くの野菜が消費できず、売れ残ったのだった。
これを解消するため、領主は農産物を一旦買い上げ、エボラや敵対するグランドラにも農産物を出荷し、貨幣を稼いだ。
それと同時に、農業従事者以外の者には、エボラからベージャまでの道路整備や石ころ通行証の作成などの公共事業を作り出して、稼いだ貨幣を市中に供給するようにした。
これらはベアトリス妃がカセレス学園の商業講座で学習した内容であった。
この後、安い農産物がベージャから入荷するようになったエボラでは、農産物を東のバダホース村に出荷する事になり、エボラの3男とバダホースの村長が知り合うきっかけになったようだ。
ベージャが経常的に貿易黒字を稼ぐようになったその資金を使い、防御力の強化にも力を入れたのは当然である。
その一環として、エボラにも防衛力強化のための無償資金援助を行ったのだった。
「ここベージャでは、どのような貨幣が流通しているのですか?」
殿下が執事に指示を出すと、しばらくして別邸にあるだけの種類の貨幣が集まってきた。
ここには金貨は無いが、銀貨や銅貨もいろいろな物が混じっている。
「ほう、帆船模様の貨幣はリスボンのですね?」
「そうです。グランドラからはリスボンの劣化した貨幣が支払われますね」
「消耗しているものも、かなりありますね。特に銅貨はひどいですね」
「はい、劣化のひどいものを押し付け合う事もあります」
「では、ベージャに交換所を作りましょうか」
「えっ、交換所とは何です?」
「初めに金貨、銀貨、銅貨などを造幣し、各都市に供給したのはカセレスの初代マクダネル様です。以降は傷んだ貨幣の交換もしております。それが聖域である最も大きな理由なのです」
「えっ、そうだったのですか!」
「留学されていたベアトリス妃も、その事には気が付かなかったのですね…。大量の大金貨や金貨、銀貨などを有するカセレスは、万一の襲撃にも耐えうるように聖域として神の御力によって守られているのですよ」
もちろん、大量の金貨などは無いのだが、そう考えるのが自然だろうし、これからも貨幣の供給源として、その地位を守らなければならないのは事実だ。
そして『交換所』という施設を運営することで、各都市の資金を把握、コントロールすることが可能になるかも知れないのだ。
我ながら、ナイスアイデアだ。
カセレスまで貨幣を運搬するのはリスクが高すぎる。
それを回避するには、交換所を建設する事とし、その見返りに土地を得ればいいのだ。
交換所の保安のため、そこには貨幣を置かない。
つまり、マジックバックと同程度の亜空間利用が可能なら、カセレスで入れた貨幣がベージャで取り出す事もできるのではないか?という考えだ。
私の考えでは、ひとつは交換機。
これは劣化貨幣を入れると、新品のカセレス貨幣が出てくる機械だ。
つまり、貨幣を入れなければ新貨幣も出て来ない。
これを見えるように操作すれば、襲われる事も無いのではないか。
そしてフェルナンデス金貨など、金銀の含有量の異なる貨幣を入れれば、それ相応の枚数のカセレス貨幣が排出される両替機。
もちろん、カセレスの劣化硬貨の交換も行う。
都市が利用する機能としては、中央銀行に預けるような預入と引出、貸付の機能を考えても良い。利率は3%を基準として友好度合いによって利息が変化する。
どうだろうか?
いろいろアイデアが浮かぶが、妄想はここで終わった。
エボラから長男である領主が来たのだ。
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