第29話 ベアトリス妃
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「バダホースの村長は単なる世話役です。領主でもなく代官でもないのです。そのような相手とまさか政略結婚のおつもりなのですかね?」
「弟は功を焦っているのでしょう。真面目なだけが取り柄の素直な子なんです」
「ですが村長は、エボラ領主家3男の政治力に期待しているように感じられるのです」
「政治力?」
「つまり、エボラがカセレスに代わってバダホース村を領有し、現村長を代官にしてくれる事を願っているのでは?と…」
「ま、まさかそのような事…」
「ただ、私やマクダネル様も、ご本人が村長の娘を好きになり、ふたりが結ばれたいと願うなら、貴族としての人生を捨て村長になるのも、別に悪いとは思いませんけどね」
ベアトリス妃は首を横に振りながら『まさか…』と呟いていた。
「うかつでした…わたくしがカセレス学園への潜入を自慢などしなければ、弟ニコライも真似などしなかっただろうと…今更ながら後悔しています」
「とりあえず、エボラ領主でもあるご長男の回答を待ちましょう。それによって対応策を考えるほかないでしょう。せっかく私達が連合仲間になるのですから」
回答が来るまで、この別邸で泊めてもらうことになった。
1階の客間には、なんと風呂があるらしい。
ここベージャは、水源に恵まれた土地だからだろう。
それにしても、サラは私と同室で手配されていた。
特に拒否する訳でも無いサラに聞いてみた。
「同じ部屋でもいいのか?」
「一般的には主と従者は同室で手配するでしょうし、もちろん私は嫌ではありません」
「そうなのか…」
「そもそも私はご主人のための存在です。望まれるのであれば、むしろ誇りです」
「アナはまだ15歳ですがわたくしは23歳、既に完成されています」
「うん、確かに非の打ちどころの無い完璧な肉体美だと思うよ」
「あ、そこまでは言いすぎかも知れません…人には好みがあるそうですから…」
「まー、見たことが無いから良く分からないけど…お風呂一緒に入る?」
「……是非にとおっしゃるのでしたら……」
脱衣室でお互いをチラチラ見ながら半裸状態になると、すごく恥ずかしい気持ちになって、ストップを掛けてしまった。
「も、もうだめ!それ以上服を脱がないで」
乳房の上半分が見える程度までは良かったのだが、そこからブラを取った瞬間、一瞬見えた段階で、一気に私の耐性の限界を超えてしまった。
「あーだめだ。私の精神的な耐性は15歳に戻ったみたいだ。刺激が強すぎる」
いつものいたずらっぽい笑顔だが、頬が少し赤いサラ。
「では、今夜は何も見えない暗がりで、ご一緒しましょう」
サラが一旦脱衣室から出て、私が先に浴室に入り、体を洗って浴槽に浸かった。
今でもまだ、胸の鼓動は少し早い…。
それでなくても、彼女のことが好きなのだ。
そして、本当は抱きしめたいという願望もある。
なのに、先に裸を見るのは順番が違う気がする。
きっと、徐々に慣らしていかないとロキは壊れてしまう、なんてね…。
何だか不思議な気持ちだ。
65歳まで生きた自分には、人に言えない恥かしい思い出がいっぱいある。
長い髪の女性を好きになったり、ぽっちゃりタイプが好きになったり…
結局交際に失敗するたびに好きになるタイプが変わるアホだった。
年齢を重ね自分なりの生活が安定してくると、実は本当に心から好きになった女性がいなかった事に気が付いた。
タイプなど関係なかったのだ。
そして周囲に私の結婚を待てない人もいて、良い人を探してくれて、ご丁寧にも出会いの場をセットしてくれたのだった。
おそらく家内も同じような理由ではないだろうか。
お互いに『昔の事は聞かない』大人だったからうまくいったのかも知れないが、娘が生まれ、別れるほどの衝突もなく、退職金を手にして初めてやりたい事をやったのだろう。
浴槽から出てタオルで体を拭く。
細い腕、締まったお腹、さほどない胸筋…青年そのものだ。
脱衣室を出るとサラが薄いネグリジェを羽織って待っていた…。
思わず『ゴクッ』とつばを飲み込んだ私。
サラが私の前に来て、私を抱き締めてくれた…。
「サラ……ありがとう」
にっこり笑ったサラが腕をほどき
「ロキ様、待っていてくださいね」
そういって、脱衣室に消えた。
この日、初めて同じベッドで寝て、彼女を抱き締めて…
それからは全て、サラにお任せでこの世界での初経験をしたのだった。
前世では娘はできたものの、家内との行為は理想とはかけ離れたものだった。
お互いの恋愛感情が少なかったうえに、自身のテクニック不足のせいか、或いは、家内の反応の薄さ故なのか。
卵が先か鶏が先かの話になるのだろう。
だが、サラとの行為は私の想像を超えていて、女性の優しさとは、こういう物なのか!
と目からうろこが落ちていた。
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