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第25話 授業初日2

土日は午前10時、12時、午後は15時、17時の計4回予約投稿の予定です。



実習は、木材サンプルを見て木の種類を判断することから始まる。

杉、ヒバ、桐、欅、松など。


杉は高くまっすぐに育つので、木目が直線的なことが特徴だ。

ヒバは独特の強い香りを持ち、防菌効果が高く水にぬれても腐りにくい。

桐は成長が早く材の密度が低いため吸湿性が高い。

欅は、材が固く狂いが少ない。


サンプルは無いが、松は『やに』と呼ばれる粘性の高い樹脂を分泌するため腐敗や虫食いに強く、地中に埋める杭や土台に使われる。


日本人として生まれ育った私としては、それぐらいの知識は持っていた。

何と言っても、木造建築時代の人間なのだ。



木材サンプルを手に取りながらスシに説明していた私だが、気が付くと木工教室の全員から注目されていた。


声が大き過ぎたようだ。


「アロンソ先生、すみません。次、お願いします」


そう言うと、アロンソ先生からは柾目まさめと板目について説明がされた。

これは丸太から板を切り出す方法による違いで、板目は曲線混じりの木目模様だが、柾目まさめは直線に近いまっすぐな木目になる。


今日は建築材料についての授業だったが、次回は、私が伝授した『炭の作成』についての授業だそうだ。



3の鐘が鳴り、昼休憩のために教室を出ようとした時、2人の男子生徒が近づいて来た。





スシに近づいて来たのは、体格の良い大柄な男で、もう一方の小柄な男の子は少し後ろで控えている感じだった。



「君達、メンリオ村の人かな?」


「いいえ、私達は地元カセレスの住人よ」



「えっ、カセレスに住人はいないという話じゃなかったかな…」


すると後ろの小柄な子が耳打ちした。


「そういえば最近、マクダネルきょうのお屋敷に使用人が来たって噂だよ」



「ところで、私達に何の用かな?」


「いや、君達が木に詳しいようだから、メンリオ村の人かと思って…」



「そう…貴方達はどこから来たの?」


「あぁ、バダホースからだ…」



面白いことに、大柄な子がスシと話をしている時、小さな子はスシに敵対的な表情をしている事に気が付いた。

私の単なる勘だが、この小さい方の子は、どうも女の子のような気がしてきた。


ひげが生えていない私が言うのもなんだが、小さい方の子は肌が綺麗だし、ひげもない。


「残念だったわね、カセレスの住人で…」


そう言って、教室を出て食堂へ向かったのだが、あまりの人の多さに利用を諦め、自室で休憩をとる事にした。



「よくあれで苦情が出ないものだな…」


「無料だからでしょう。昼食は4の鐘まで利用できますから、慣れてくれば自然と利用時間もばらけてくるでしょう」


「まぁ、空腹ではないんだがな」



ふと考えてみれば、この世界に来てから空腹を感じた事がない。


頭に浮かんだのは、とんでもない思い付きだ。


「スシ、もしかして私は人間ではないのか?」


「いいえ、私達も、その他の人も、いずれも神が作った人型生物ですので、これを人間と呼ぶのが正しいでしょうね。ただ普通の人間は細胞一つ一つが生命体です」


「一方、私やロキ様は、体内の組成変換が行われて、細胞が人工体に置き換わったのです。つまり、原理や構造は同じですが組織が違うのです」




「なるほど…細胞が人工体なら維持する栄養が必要ない分、空腹を感じないのか…」


「はい。でも体を動かすための栄養は必要ですし、子供は作れるようですよ」



「精子は体内で作れるようにしてあるって事か…どんなDNAが組み込まれているんだろう?」


「『DNA』が何かは分かりませんけど、私達の細胞は自己増殖をしない合成物でできています。従って、癌になったり変質したりしないのです。私達の変化は上級神によって任意のタイミングで、任意の変化が与えられると理解しています」



「そうか…変化のしくみが無いから、病気に強いという事なんだろうね。でも少し男らしくなりたいな…」


「でも、あまり変わると、マクダネル様でなくなってしまいますよ?」


「そういう事か…」


午後は体を動かす訓練の授業か、または、魔法を習得する時間割になっている。

選択科目は剣術、槍術、弓術、盾術。



「スシ、私達にとって筋肉を鍛える訓練って意味無いんじゃないの?」


「確かに自己増殖機能が無いので、鍛えても筋肉量が増える事はありません。ですが、スキルが生える、又は、スキルを思い出す、という効果は期待できます」



「なるほど…脳の問題か。それなら、魔法も同じように使っている間に新しい魔法を覚える、又は、思い出す可能性はあるよね?」


「はい、確かに」


「確かスサーナの風魔法は生活魔法とは別次元の威力だと聞いていたが…」


そう思ってスサーナのスカートを見たが、膝下まであるスカートを履いていて、とてもめくれ上がる短さではない。


「見たい?」


唐突なその質問が、魔法なのかスカートの中の事なのか分からず、65歳を超えているはずの自分が顔を赤くなっているだろう事に驚いた。


「いや、別に…」


私の顔を覗き込みながら「ふ~ん」と言うスサーナ。

どうも悪女っぽい気がしてならない。


なんだかんだと、スシと楽しく午後の時間は過ぎていった。





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