第23話 赤髪のスサーナ
平日は17時と19時の2回予約投稿の予定です。
学園の確認、点検は終わった。
校舎に囲まれた場所にあるのが、訓練場と礼拝堂だ。
午後は訓練場でレイピアの型とサラとの対戦訓練をおこなった。
「ご主人さま、レイピアの訓練は終了です。しっかりスキルを習得されています」
「ありがとう。サラ」
だが、レイピアの扱いは、身体が思い出しただけだ。こだわりというほどの事はないが、異世界と言えば剣というイメージがあって、剣の訓練は続けていこうと思っている。
次は礼拝堂に入ろう。
ここは初代が作ったステンドグラスにより、幻想的な空間になっている。
元の世界ならイエス像でも設置されていそうな場所に、複雑なガラス棒が幾本も立っていて、キラキラした光が天井まで伸びている。
直径50㎝、高さ235㎝のガラス製の集合体で出来た塔、これが『光の塔』だ。
ゲームなら、HPとMPが全回復するような場所。
この空間では魔法が発動しやすく、大抵の者はここで生活魔法の発動に成功する。
それによって、自信が持てるようになる。そんな施設だ。
火、水、風、光、いずれも問題なく発動できた。
「生活魔法も合格ですね。では、ここで待ち合わせしていますので、しばらくお待ちください」
そういってサラは外へ出た。
私はキラキラした光の柱を見ながら、これまでの半年間を思い出していた。
定年間際の無役から、やらなければならない事が一杯の環境に変わって、肉体だけでなく精神もリフレッシュした事がうれしい。
サラとともに礼拝堂に入って来たのは、赤髪のスサーナだった。
「ロキ様、久しぶり!」
「やあ、スサーナ」
このスサーナは17歳。
アナのような幼児体形ではなく、標準体形そのもの。
メイド姿のスサーナは落ち着いて見えたが、制服風の服装を着た姿は、そのまま学生で通ってしまう。
「えっ、もしかして明日からスサーナも学園で過ごすの?」
サラは少しからかうような目で、私を見て
「はい。カセレスから参加する学生は、ご主人さまとスサーナの2名です」
「サラ姐の部屋は私が受け継ぐから、安心して!」
「つまり付き人じゃなく、同級生って事?」
「正解!ふたりで学園生活を楽しんじゃいましょう!」
「では、執務室に戻りビトリアの状況を聞きましょう」
「スサーナはビトリアの偵察に行っていたのか?」
「はい」
学園の3階にある臨時の執務室。
「連合都市のプラセン市までは定期便があって行けますが、プラセン市から北へは山の上にある都市ベハルから来た商隊の帰りに便乗する事になり、半月ほど待ちます」
「細かい話はいいわ、スサーナ。それから?」
その後の行程を簡単にスサーナは話したが、サラマンカ、バリャドリード、ブルゴス、ビルバオのルートで1か月以上掛かるらしい。
彼女も護衛を兼ねて便乗し、商隊の貨幣交換や高額商品の売買で旅費を稼ぎ、ビルバオまで行く予定だったのだが、ブルゴスに到着した商隊がレオンに行き先を変更したため、彼女もレオンに行って帰って来たらしい。
詳しい事は分からないが、自治を始めたビルバオには活気が無く、商売にはならないと判断したために行き先を変更した、商人はそう言ったそうだ。
スサーナは、スカートの腰ベルトの後方に短剣をX字に2本差していて、接近戦が得意なのかと思ったが、風の攻撃魔法が使える希少な人材だそうだ。
「ロキ様、私が魔法を使う時は、私の後ろに隠れて下さいね」
サラが『コラ!』と言ったので、『??』と思った。
「スサーナは私を守ってくれるのだろう?」
「風でスカートがめくれるのを見せたいのですよ!スサーナは」
「あはは、お姐にはお見通しか~。 ドキドキして楽しいと思うよきっと!」
スサーナは楽しい事のために生きているようだ。気をつけよう。
今後の学園での行動について、少し打ち合わせをしておこう。
「スサーナ、明日は初参加のミアハダス村のホームルームを見ようと思う」
「はい。朝食の準備はどのようにしますか?」
「う~ん、最初は学生と同じ食堂でいいだろう」
「承知しました」
「それと、同級生らしい言葉使いでいいよ、スサーナ」
「では、呼び捨てでいいと言う事ですね!」
「調子に乗ってはダメよ」
お叱り顔のサラさんから念押しが入った。
お読み頂き、ありがとうございます。
『この作品を読んでみよう』とか、『面白そう』とか思われた方、
是非、ブックマーク登録や、いいねボタンをお願いします。
励みになります。