第15話 郵便事業
平日は17時と19時の2回予約投稿の予定です。
難民たち15名を引き連れ屋敷に戻り、話をした。
「私がこの聖域カセレスの統治者、ロキ・マクダネルだ。隣にいるのはサラ。私はみんなを雇う事にした」
サラが細かい指示を飛ばす。
「ご主人様の事は『ロキ様』、私の事は『サラ様』と呼ぶように。ひとまず役割を決めたい。家族の単位に固まりなさい」
バラバラと横並びに距離を取り始めた。
夫婦と子供2人、夫婦と子供1人が3組、母親と子供が3組、女性単独が2組だ。
「男性のいない5組は屋敷内に泊まってもらいます。付いて来なさい」
これから皆の食事の用意が必要なのと、部屋割もあるのだろう。
母親と子供の3組の家庭と、女性の単身者を2人連れて行った。
次は私の番だ。
「男性がいる4組は、屋敷の外に住まいを作らなければならないが、それまでは離れの小屋に住んでもらう。付いて来なさい」
離れの厩舎小屋に、馬の世話ができる夫婦を配置した。
厩舎横の小さな倉庫が3つ、この中を整理して残り3組に住んでもらう。
屋敷の中では、厨房の向かい側から続く小部屋に、母子3組と単身者2人を配置し、交代勤務にすることで乳児に対応する事にしたようだ。
幼児から小学生ほどの子供が5人いるので、母子家庭の女性には保母のような仕事も割り当てた。
男4人と私で、屋敷の外に簡易の家を建てていくことになる。
先代マクダネルは、魔法で家を建てる事ができたらしいが、私にはできない。
そこで倉庫から日曜大工の道具箱から『のこぎり』を持って来て、電柱サイズの木に、くの字型に切りこみを入れたあと、斧で切り倒した。
男たちと枝を払い、建築予定の場所に穴を掘り、電柱サイズの木の柱を立てて行く。
彼らも私が何をしたいのかを理解したようで、次々と柱を埋めていった。
そのうち、小学生の子供がお父さんを手伝い始め、奥さんもやってきた。
どうやら食事の用意が出来たようだ。
まるでキャンプの延長のように、この屋敷から離れた場所で、家族単位で食事をしているので、ひとまず、私とサラは屋敷に戻り食事を取った。
それ以降は、私は現場監督となり、木の柱を地面から50cmの高さに切り揃え、家の土台とし、倉庫にあった平らな木を床材として張った。
あとは彼らが思い通りに細い柱を追加したり、壁板を張ったりして、思い思いに家を作っていた。
一部の人は、私よりも家に詳しいようで、任せていれば大丈夫のようだ。
あれからおおよそ1週間が経った。
さすが同じ村の出身者たち。
ずらっと5軒の家が建ち、倉庫で過ごす者はいなくなった。
屋敷横の井戸から水をくみ上げ、洗濯する者。
交易所に買い出しに行く者など、やらなければならない事を手分けして処理していた。
厩舎の係りになったゴンザレス一家は、すぐ横の部屋に一家で住み込んだため、家は必要なかったようだ。
すぐ隣の井戸はすばらしいと言っていたが、理由は桶の巻き上げが軽く、水質がとても良いらしい。
時間があれば、巻き上げのラチェット機構について考えてみようと思う。
私もサラも、ウォーターの生活魔法を使うので、井戸水の状態は知らなかったのだった。
サラが依頼していた男女の使用人の制服と、女性用メイド服が出来上がってきた。
私が彼らに期待しているのは、聖域連合の首長間の郵便事業だ。
ついでに市場の状況調査ができればいいのだが…。
馬は2頭いるので、これを活用しながら任務の遂行を指示した。
厩舎のゴンザレスが代表になり、質問をしてきた。
「どのような間隔で手紙の配達と回収をやれば良いんですか?」
「自分達が無理をしない範囲、具体的には外泊は1泊までにすること。プラセン市とバダホースが遠いので、このルートに馬を使えば良いだろう」
「郵便事業の開始時は、私から首長あてに手紙を書くから、それを持って行き、返答を回収することが、最初の任務だ」
サラが補佐して言う。
「任務遂行のための具体的な行動計画は自分達で決めなさい、とロキ様は仰っているのです。分かりましたか?」
「分かりました。自分達で考えます」
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