第12話 学園
土日は午前10時、12時、午後は15時、17時の計4回予約投稿の予定です。
次は農耕が主な産業であるトルヒリ村だが、同じ方向にある学園について少し確認しておきたい事があった。
屋敷から10分も歩くと学園が見える。
以前にサラから、簡単にカリキュラムの説明を受けたのだが、夢の中の話だったし、良く覚えていない。
各村から1学年20名の枠があって、各々の村の主な産業に関する内容を1年生で学習するらしい。
2年生になると、麻から繊維、繊維から服装など応用に関する学習と実習になる。
プラセン市だと薬草から薬へ。
共通しているのは、戦闘術。
剣や盾、槍、弓のそれぞれを最低限使えるようにする事と、小動物を狩れる程度の技術認定を行っている。
生活魔法も同じく。火、水、風、光、最低限は使えなければ卒業はできない。
問題は3年生の自由研究だ。全くの自由では意味が無い。内容は役に立つもの。
9月から3年生に編入になる身分ながら、創設者一族として各教師たちに課題を伝えた。
研究の内容は『世の中の役に立つもの』でなければならない、と。
進んだ社会から来た者としては普通の知識だが、クロスボウ、溶融炉、製鉄、陶器と釉薬、磁器(石もの)などの研究課題を示しておいた。
これらの課題を中心として、3年生に取り組ませてほしいと言ったのだが、『向かない者も居る』という反対意見が出た。
当然、課題は命令ではない。
『自由研究』なのだから、野菜や肉の料理研究でも良いし、海産物から取れる旨味成分でも、調味料開発でも良い。
このような話を教師たちにしていたら、昼休憩はすっかり終わって、生徒達も交えた討論会に発展し、大いに盛り上がった。
様々な料理や、調味料、調理器具などを知る私の例え話は、彼らの好奇心を大いに刺激したようだ。
それにしても、生徒達は自由な服装をしていて、いかにも裕福な者とそうでない者との差が大きいようだ。
結局、学園を出発したのは夕刻の4時。
聖域カセレスの結界の外側、東側には天然の防壁と呼ぶべき森がある。
この密林を抜ける細い街道は、この時代の戦闘集団に対する進行の障害でもあり、陣形を組めないという障害でもある。
私とサラのような軽装の少人数には、障害にはならないとは言え、森の中の細い街道を進むため、トルヒリ村周辺には21時ごろに到着して、監視と偵察を開始した。
農業が主な産業という事もあり、家々の明かりは消え、まっくらなのだが、村の東側に数人の男と明かりが見えた。
暗視スコープで見てみると、柵の修理をしているようだ。
農業と言うのも楽ではない。
夜が明けて翌日、サラの案内で村長の家を訪問して知ったのだが、害獣が出るようになり、収穫時期までには柵を修理しなければならない切迫した状況だという。
村に数名、学園の卒業生もいるそうだが、プラセン市のギルドにも余裕はないだろう。
ならば、学園の3年生を害獣駆除の実習という名目で、狩りをさせてはどうだろうか、という提案に村長は同意した。
5時間掛けて学園に戻り、害獣駆除大会の開催を提案した。
参加資格は3年生。
3名~4名で1チームを組み、2泊3日で狩りをする。
目標は害獣のイノシシだが、小動物は捌く事も含めKg当たり1銀貨で買い取る事にした。
当然キャンプはするのだが、宿泊は安全を考慮して、村の宿舎を男女別に利用する事にした。
3年生は、5クラス×20名=100名いるのだが、参加は9チームとなった。
結果、けが人も出ず、教師も生徒も楽しく狩りを経験した事と、見事にイノシシ3頭を仕留めた。
更には、卒業まで2か月という事もあり、キャンプで告白を行い5組のカップルが誕生したそうだ。
彼らは最初からそれが目的でチームを組んでいたらしい。
なるほど…。鈍い私はそれでさえ感心してしまう。
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