第10話 マクダネル初の挨拶
土日は午前と午後の2回予約投稿の予定です。
操作ミスで投稿してしまいました~~
明日の分は、再び予約投稿に挑戦します。
「いや……実はサラに言っておきたい事ができた」
「なんでしょう?」
「サラが戦闘に加わった時、気がついたんだ。もし、サラがいなくなったら、きっと私はこの世界でひとりぼっちになってしまう。だから、命を大切にしてほしい」
「…ありがとうございます」
サラは嬉しそうに笑っているのに、なぜか目には涙がにじんでいた。
命を大切にする事がそれほど珍しい世界なのか?…沈黙のあと
「ご主人さま、私はそのようにはなりません。ご主人さまに付き従う事が使命なのです。使命を果たさずに死ぬ事など、上級神はお許しにはなりません」
「えっ? サラは不死身なの?」
少しゆるんだ表情のサラ。
「いえ、ご主人さまの言う『不死身』とは違います。私達には上級神の加護があり、どんなに重症を負っても命を落とす事は無い。そういうことです」
「もしサラが重症を負ったら、例え死なないと分かっていても、僕は泣くだろうな…」
そう言って、ズボンのポケットに入れていたハンカチをサラに手渡した。
サラはいたずらっぽく笑いながら、ハンカチで涙をふく。
過去の人生でも、こんな風に告白した事は無い。
いくじの無い人生を送ってきたけど、やっと男らしく正直に言えた気がする。
まだ夢の世界にいるような気持ちのせいだろうか…。
冒険者たちが盗賊を処刑、埋葬して、キャンプ場が正常に稼働し始めた。
夕食の準備だ。
どんな時でも彼らは淡々と生活を営んでいる。
まだまだ、私にはできない事だ。
プラセン市の商人、グイスガルドさんに呼ばれ、夕食をともにすることになった。
聖域連合内の冒険者ギルドはプラセン市にあり、冒険者として活動する者は、ほぼ学園出身者であるらしい。
したがって『冒険者=先代マクダネルを知る者』という事だ。
もちろん、グイスガルドさんも先代を知るひとりだ。
グイスガルドさんの荷馬車の後ろに、キャンプファイヤーのように集まった人達。
ここにいる約20名で、盗賊団35名を返り打ちにしたのだ。
(私とサラも5名を倒した。)
初めてマクダネルが戦うところを見たこと。
そして初めて報奨金を得たこと。
これらは先代とは違うマクダネルを印象付けたのだろう。
「みんなに何かご挨拶を」
みんなが私を注目している以上、何か言わなければこの場は収まらないと、サラの進言があった。
「私が二代目、ロキ・マクダネルだ。盗賊団を撃退できた事、死者が出なかったことに安堵している。報奨金はみんなの健闘に感謝を示したかったからだ。これからもみんなの活躍を期待している。ありがとう」
『お褒めの言葉を頂いたぞー!』
『乾杯しようぜー!』
これほど、喜ばれるとは思ってもいなかったため、正直、驚いてしまった。
それはつまり、先代が人との関わり合いを避けて来たからなのだろう。
まー 先代は神で、私は人間なのだから、当然の違いなんだけど…。
夜が明けて、寝袋などを片付けてから商人の荷馬車とともにプラセン市へ。
衛星都市はどこも、おおよそ人口1万人程度なのだが、プラセン市は人口5万人の『都市』と呼ぶのにふさわしい規模と防壁がある。
しかし、弱点もある。
この人口が多い都市では食糧生産が圧倒的に足りないのだ。
そのため、目の行き届く小規模な農場は大丈夫なのだが、死角がある大規模な農場では、簡単に作物が盗まれてしまう。
都市が大きくなれば、不労の者、貧しい者は、それなりの確率で必ず存在する。
プラセンの商人、グイスガルド氏とともにプラセン市内に入った。
挨拶が必要とは言え、さすがに領主邸に突然の訪問はできない。
グイスガルド氏から領主フェリクス氏に面会を申し込んでもらう事にした。
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