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日本一周、その後

作者: 雉白書屋

 ――まずは日本一周、おめでとうございます!


 あ、ありがとうございます! いやー大変でしたねぇ。沖縄から始めて北海道まで行ってまた帰ってくるのは。しかもバイクじゃなくて自転車ですからね。そう、この足で。


 ――達成したご感想は?


 いやー、人の温かさとかが身に染みましたね。この社会で生きているというか助けられているというか、自分一人じゃないんだなって。そう、生きていけるのも一人じゃないからなんでしょうねぇ。


 ――日本一周を始めようと思ったきっかけなどは


 僕ももう二十歳になってそろそろ就職活動って感じだったんですけど、その前にいっちょ、やってやろうかなって。


 ――なんでもアルバイトでお金を貯めていたとか。


 ええそうです。でも全然足りなくてぇ! いやー、見通し甘かったぁー!


 ――それで、どうされました?


 それがね、夜の繁華街をぶらついてたら酔っぱらって眠っている人がいたんですよ! だからチャンスだと思ってね、へへへ、財布を頂いちゃいましたよ! 不用心なのが結構いるもんなんだなぁって思いましたよ。どうせ二度と来ない街ですからねぇ、思い切ってね、ははははは!


 ――他には何を?


 他ぁ? ああ、あとは神社のお賽銭とかですね。貯金箱感覚、ははははっ!


 ――それで、お金は足りましたか? お金以外は何か調達しましたか?


 ああ、それでも全然足りなくてぇ。ほら僕、野宿とか無理なタイプじゃないですかぁ。食い逃げと万引きですね。あと洗濯物も頂きましたね。洗って干すのも面倒なんで。まあ汗かいたら捨てましたけどね、はははっ。


 ――他には何か


 いや? 特にないですけど。


 ――SNSに上げたスタート時のあなたの写真を拝見したんですが、ゴール時と自転車が違う気がするのですが……。


 あー! そうそう! あのクソ自転車! パンクしやがったんですよ! だからそう、その辺にあった自転車を借りたんですね。ゴールした時はあれ、四台目かなぁ。


 ――それは大変でしたね。旅の途中でこれは困ったなぁ、など他に何かありますか?


 あー、そうですねぇ。あ! ムラムラしたときとか困りましたね。夜道で一人で歩いている女に後ろから抱きついちゃったり、まあ、風俗行ったりして何とか耐えましたけどねへへへへ。


 ――他には何かありますか?


 他ねぇ……つーか何すかその目。なんか嫌だなぁ。あいつらみたいで……。


 ――いえいえ、冒険譚をお聞きしたいなぁと


 あー、そう? まあ、このチャレンジはストレスが大敵ですからねぇ、そのせいで投げ出したくなっちゃうことも何度かあったし、だからストレス溜まったら自転車で走りながら人殴るとか、まー、県をまたぎますからね。捕まらないと思ってね。後はまぁ空いている家に入ったりとか。盗むついでにパァーと火をつけたりとかね。ははは、遠くの坂の上から見るとまた、ノスタルジックって言うんですかね。結構いいもんですよ。


 ――なるほど、ところでタクシーを使いましたね?


 あー、バレてる? そうそうあのクソジジイの運転手ね。自転車をトランクに入れろっつったら嫌な顔しやがって本当にムカついたよ。だから乗り逃げ! おまけにその日の売り上げ全部奪ってやったよ! ざまぁははははは!


 ――なるほど。では、ゴール地点で大暴れした理由をお聞かせ願えますか?


 あー、SNSで告知したのに、全然出迎えが集まりやがらなかったんですよ! だから俺、ムカついてさぁ! その辺にいる奴らぶん殴っちゃったんだよねぇ。あー、思い出したらイライラしてきたわぁ。人の偉業を祝えないなんてクソだねクソ! 世の中クソ!


 ――なるほど、ありがとうございました。ちなみに、次の目標などはありますか?


 あー世界行っちゃう? ははは、まー、そのためにはまずはここを出ないとね。それで弁護士とかまだかなぁ。黙秘権使ってんだけど、ああ、記者さんだから特別に話したんだよ?

 ……え? 記者とは名乗ってない? 

 その恰好、え? 刑事……?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 構想、読みやすさなど本当にすごい。 先日からこの作品以外も拝読していますが、どれも独創的なストーリーで感服です。 応援しています。
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