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Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
ブリュートナー『クイーン・ヴィクトリア』
88/317

88話

 しかし、カリムの腹は決まっている。


「問題ない。やれるだけのことをやってダメなら、この子も諦めがつくだろう。だからこそ、文句のつけようのない、最高の環境を用意してあげたい」


 そのために親はいる、とでも言うかのように、バックアップの準備はできていた。あとは本人の意志。


 今のままでは勝てない、ということはわかりつつも、それでもやはり迷うところがユーリにはある。だが、無言である、ということは、それを受け止めるということにも繋がる。感謝はしつつも、悔しさが残る。


 その感情をカリムも感じ取る。だが、ここは後で恨まれたとしても、曲げずに実行する時。


「というわけで、このピアノをお願いしたい。愚息が迷惑をおかけした。申し訳ない。改めてよろしく頼む。このブリュートナーを、本当の姿に導いてほしい」


「いやよ」


 ……場が再度、凍りつく。


 一刀両断したのは当然サロメ。ヤダ、と断りを入れた。やりたくない、と。


「……は?」


 冷静に、をモットーにしているカリムも高い声で唖然とする。いや、どう考えても受け付ける流れであった。

 

 若干怒りを交えながら、サロメはその理由に声を張り上げる。


「なんであたしが、この家の円満のために一肌脱がなきゃいけないのよ。今日はもうオフ。ついでに屋敷内を散策してこよう」


 荷物を持ち、この場から退散しようとする。


 それをランベールが引き止める。


「さっき、嫌いじゃない、とか言ってなかったか?」


 嫌いじゃない、ということは、前向きに検討する、という意味に繋がると思っていた。しかし、どうやらそんなものはコイツには通用しないかもしれない、と自身の常識を疑い出す。


 はぁ? と、睨むようにサロメは抵抗する。


「マイナス一〇〇点がマイナス九五点になった程度よ。やる理由になんないわ。それじゃ」


 振り払い、そそくさと広間から消え去る。


「おい!」


 という、ランベールの呼びかけも虚しく、どこかへ。ひどい状況だ。残されたのは男三人。


「すみません、自分のほうで担当させていただきます。あいつのことは忘れてください」


 呆気に取られたのは息子も同じ。なにもかも予想できない。


「……なんなんだこいつらは……」


 こいつ『ら』。それに対してランベールは、少し違和感を抱いた。

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