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Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
ザイラー『マエストロ』
298/317

298話

 親切丁寧に弾き方をレクチャーしてくれるもの。初心者向けに、まるで音楽ゲームのようにノーツが鍵盤に降っていき、流れを教えてくれるもの。様々にあるが、ピアノ人口そのものは減るどころか増えている。


 とはいえ、中々家にピアノを置くことができない。置けるような賃貸も年々金額が上昇。おそらくはまだしばらくは、この数百年チェンバロから進化を続けてきた楽器の需要はある。だから。一生の仕事だから。自分の意志を早いうちから込めておきたい。


「はー、殊勝な心がけだことで。ま、調律師は減ってる一方なんだけどねー。どんだけあんた達が誇りを持って経営しても、調律する人間がダメならそのピアノは力を引き出せないまま。面倒な楽器よね」


 手間のかかる子ほど可愛い。だが、この子は湿度やら温度やら輸送やら、マンボウくらい丁寧に慎重に扱わないと死んでしまう難しい子。そこはサロメとしては楽しいわけはなく。


 そのマイナスな発言。カルメンには引っかかる。


「なら、サロメが調律を教えてあげたら。そうすれば少なくともここにひとりは若い調律師が生まれる」


 それはいい、とひとり納得。自分は一生弾いていたい。なら、調律師が増えることはいいことでしかない。増えれば増えるほど、切磋琢磨して腕を磨いていくのだろう。そうしないと仕事貰えないし。どんな世界も一緒。ピアニストもそういうものだし。


 鼻で笑いながらサロメはスタスタと歩を進める。


「なんでよ。メリットもない。あたしからしたら、この先のピアノ業界がどうなろうと知ったこっちゃないっての——」


 言いかけたところで。




 足が止まる。




 ピクっと反応する。


 通りを行き交う人々、ではなく。後頭部がまるで電波のような信号をキャッチしたもの。それは。並ぶ一軒の店。

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