表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
ザイラー『マエストロ』
279/317

279話

 数瞬黙ったのち、意を決してルノーは口を開く。


「……ある、と言ったら?」


 それも適当。いや、ていうか本当にあったのか限定品。あるかそりゃ。書き入れ時だし。


 案の定サロメは、


「はぁ?」


 と表情を歪める。こっちはそこの従業員から聞かされてるってのに。その人物ですら買えなかったと嘆いていたのに。このおっさんが買えているとは到底思えない。ないでしょどう考えても。


 しかしルノーは食らいつく。


「そこのオーナーから受け取っていてね。日頃お世話になっているお礼だそうだ」


 もうここまできたら突き抜ける。オーナーは最優秀国家職人章、通称M.O.Fのロシュディ・チェカルディ。勝手に名前を使わせてもらう。もちろん会話もしたことない。顔もよくわからない。とりあえず店の方角に向かってあとで謝っておこう。


「お世話してんのはあたしよ。お店に対してなら、あたしに食べる権利は最初からあるでしょうよ」


 そもそもがそこの従業員であるジェイド・カスターニュはちょくちょくアトリエまで来ては、調律だったり無駄話だったりを店長とかとしてるだけ。ゆえにサロメにとっては、本当に預かっているのだとしたら、こうやってエサに釣られるような今の状況もおかしいと断言できる。あるなら即よこせ。


 ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべるルノーは、自身を指差し。


「こっちは経営者。そっちは雇われ」


 と現実を叩きつける。文句があるなら店の籍は削除。ただのひとりの少女。わがままな。だが、きっとそれをこの子は望まない。なぜなら——




 見つけなくてはならないピアノがあるのだから。




 そのためには、調律のできる店でできるだけ自由にやらせてもらえる環境が必要。そんなのウチくらいなものだろう。だから。譲らないし譲る必要もない。うん、きっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ