表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
ザイラー『マエストロ』
274/317

274話

 それについてルノーは聞いたことはないが、なんとなく予想はできる。流れからしても。一瞬脳内で反芻してみたが、たぶんこんな感じだろうというもの。


「まぁ……インテリアとしてピアノを買う人、自分を指名してくる人、とっくに調律が狂ってるのに『まだ狂ってない』とか言う人」


 この少女はピアノは愛しているが、ピアニストは愛していない。というかどうでもいいとさえ思っている。たまたま必要とされるだけの能力、それを神が与える人物を間違えたという話。


 それどころか。目的さえ達成してしまえば、その力さえなくなっていいとまで考えていることも知っている。あっさりと手放す覚悟。だからこその強さ?


 不満げにサロメは肯定する。


「それもだけど。水圧の弱いシャワー、オチの読める映画、子供」


「自分もまだ子供」


 アルコール度数の高い酒が飲めるようになってからが大人、とルノーは考えている。そういった意味では、まだこの子はそこに達していない。


「あーもう、うっさ。生意気そうな子供は特に。あたしの勘が言ってんのよ。今回はやめとけって」


 自分も充分に生意気なのはさておき、なんだかんだと理由をつけてサロメは断ろうとする。たしかに様々なピアノを見学することは、自身の目的に僅かでも近づくことにはなる。だが、それはそれ。これはこれ。無理してやるものではない。ノンと言える国民性。


 わかってはいたが、頑固なヤツ。そもそもが一応は雇い主のルノー。なんとかしてやる気を出させるのも仕事のうち。


「将来ピアニストになろう、とかって子ではない。ゆくゆくはピアノスタジオを継ぎたいっていう子だ。ピアノの未来を考える、いい子だと思うがね」


 自身が上手くなりたい、というよりも、手助けがしたいと将来を見据えている人物。ピアノの未来、という点では調律師と近いものがある。


 そういうのには。積極的ではないが、サロメとしても協力したい、とは思う。だが、それでもやる気が湧いてこないものは湧いてこない。


「立派な心がけですこと。あたし以外に手伝ってもらったらいいわ。応援してるって伝えておいて」


 手を振って見送る。別に自分である必要性がない。もちろん、自分が担当すればより良い買い物になるだろうけども。そこは譲らないけども。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ