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Réglage 【レグラージュ】  作者: じゅん
エラール『No.0』
23/317

23話

 当日。


 天気は快晴で雲ひとつないが、そのぶん放射冷却により寒さが厳しいパリ北駅。昼過ぎになってようやく暖かくなってきたとはいえ、少しでも風が吹くとシバリングをして体が熱を発しようとする。駅舎に存在する二三の女神像は今日もそんなパリの市民を見守ってくれている。


 そのパリ北駅からほど近い場所に、貸し会議室を発見。そこを一日限定で借り出し、イベントの下準備をする。ピアノを使う関係上、即席の吸音パッドなどを設置して、外にはバレないようにする。主役はピアニストの男であるが、スタッフは相当な数がいる。そのためか、ピアノを置くだけなら広すぎじゃないかと思われていた一室が割とパンパンになってきている。


 というのも、アトリエ・ルピアノの面々はよくわかっていなかったが、どうやらかなり有名らしい。貸し会議室の前の道は多くの人が通過している。熱烈な女性ファンも多いらしく、パニックになる可能性も大だ。


 そこに目をつけた大手レコード会社がデビューさせ、さらに登録者数も増加している。毎度のストリートピアノライブでは相当な人だかりで、警察にも何度も注意を受けているということだ。そんな中、初のアルバム発売を後押しすべく、人で溢れるパリ北駅にてゲリラライブイベントの開催。もちろん今回は警察に報告済みなので、この辺りは不自然に警官が多いかもしれない。


 まずこの貸し会議室で生配信を行い、ライブ前の雰囲気を全世界に発信。こういう本番前の自然体が好きなファンも多く、好評を博している。その中でも調律師との会話はコアなファンにはたまらないのだそうだ。


「やぁ、はじめまして。マドモワゼル・トトゥ。会えて嬉しいよ」


 上下高級ブランドのセットアップをラフに着こなし、サングラスをかけた男が調律師であるサロメと握手。パスカル・ヌーヴィック。今回の主役だ。


「ありがとうございますー!これもう撮影してるんですか、やだ恥ずかしー!」


 いつもは私服で調律するのだが、今回は『一六歳の女性調律師』といういらぬ期待をかけてきているそうで、学校の制服があるとパスカル側が知るや、当初それで来て欲しいと要求してきた。当然断った結果、サロメは中間択でパスカル側が用意したスーツを着ることになった。初めてのスーツである。どういう需要なのか。


「いや、まだこれからだよ。今はテスト」


「あっそ。損したわ」


「あれ? え?」


 爽やかなパスカルの笑顔が戸惑いに変わる。今さっきのキャピキャピしたのとどっちが本来の彼女なのか。

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