188話
今日、何かが自分の中で少しだけ変わった気がするリュカ。コレクターとして集めるのも楽しい。だが、せっかくならば。これらを使って。さらに音楽を盛り上げるような。正装で高級レストランに行くような堅苦しさもないようななにか。自身はそういうのは苦手だ。
「この歳からでも、教養なんてなにもないけど。ピアノ、なにか関われることを始めたいね。もちろん弾くことも。だが、もっともっとこの『音』の世界を広げたい。どんなことが大事、必要だと思う?」
未来にも残るようななにか。もっとクラシックが身近になるような。聴きに行くより『参加する』という能動的ななにか。それが残せれば本望。
問われたレダではあるが、もちろんピアノに関しては詳しくても、全てにおいて万能なわけではない。色々とこれからのピアノ業界について妄想することはあるが、夢物語でしかない。その中でピックアップしてみる。
「……そうですね。とりあえず——」
「とりあえず?」
どんな策があるのだろう。全く無知のリュカからしたらなにも思いつかない。が、なにかもし役に立てることがあるのであれば、やってみたい。
自身の調律したグラスホワイトを見ながら、唸っていたレダが「よし」と決意。そして向き直る。
「とりあえず。音楽祭でも作っちゃいます? なんかもっとこう、敷居が低くて、なにが出てくるかわからない、みんなが楽しめるような」
野球というものをエンターテイメントに昇華させた、サバンナバナナズのように。ここにある楽器はレモンどころか、世界一高級なフルーツ『増城挂緑ライチ』みたいなものだけれども。




