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聖女として、異世界に召喚されたみたいです。

*マークを境目で視点がミュゼァに変わります。

読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いします。

 瞼が重くのしかかっていて、このまま意識を放棄したい気持ちに駆られた。

 微かに凛とした空気を感じ、ひんやりとしているのに、反面綿で私を包むように、守られている空気を感じる。


「召喚の儀は成功したはずなのに」


「動かないぞ」


「異界からの召喚は失敗したのか」


 騒めく声に、私は、寝そべったまま目を開ける。

天井が高く、手を伸ばしても届かない天井は白く、顔を横に動かすと、そこはよくRPGのゲームで見たことのあるような、ただ広く、私の居る場所が一段高い場所に位置し、数十人の人が居た。年齢も性別のバラバラの人達だけど、皆同じデザインの司祭服を着ていた。


 柱に掲げられている蝋燭の火がユラユラと揺れていて、私のそばに一人の老人が近寄ってきた。

 髪の毛がない代わりに、白い立派な髭を蓄えた、皺くちゃの老人が私の顔を見て、涙を目にいっぱい浮かべている。彼が着ている服装は白い祭服。


「ご機嫌いかがですか、聖女様」


「聖女ですか?」


 起き上がると、私の動きに集まっていた人々が歓喜の声をあげる。寝転がっている時は気が付かなかったけど、入り口付近に二人の人影があり、寝そべっていた私が動き出したことに喜んでいる人達が多い中で、二人はじっと私を見ている。


 あまり明るくない室内で見えにくいが、背が少し高い男性はまるで、王子様のような服を着ている。その隣には、王子様衣装の人よりも頭一個分小さな、多分男の人が、大きな杖を持ち、肩までの髪は真っ直ぐに切り揃えられ、前髪もぱっつんだった。


 これが俗に言う《異世界召喚》だったなら、私は今目の前に居る人に頼らなければ生きていけない。

 私の様子に何かを察したのか、老人が涙を拭いながら、優しく話しかけてくれた。


「混乱しているのも無理ありません。先代の聖女様が亡くなってから早十数年。聖女不在の間に溜まった汚れを教会だけでは払い切れなくなって、聖女召喚の儀を行う必要があると先代聖女の予言の書を見つけたのが半年前。我々も本当に聖女様が現れてくれたことを感謝しています」


 私達の話を周囲の人は黙って聞いている。


「あのぉ、言っていることがよく分からないのですが」


 見ていた異世界に召喚されて、危機的状況だから助けてね♪と言っているように聞こえた。平和な時を過ごしてきた私に、いきなり世界を救ってくれって言われても、心が追いつかない。


 手に力が入る。


 老人が頭を垂れる。それはよく小説などで見かける権力者に対する礼のように思えた。


「聖女様、ワシは、ミークと申します。この国で司祭をしていて、上に立っております。聖女様が今後この国で不自由が無いよう、協力いたします。失礼ですがお名前をお伺いしても?」


 老人は私が握りしめていた手を解くように添えてきた。


「私は炎谷美麗ぬくたに みれいと言います」


「美麗様、まずは、場所を変えましょう。いつまでもここにいては体が冷えてしまいます」


 その言葉に、その場にいた全員が私と老人が通れるように、道を開けた。その先には私のことを先ほどから見つめている王子様の様な衣装の人と、杖を持った魔術師みたいな人が並んで立っていた。


 近づいていくにつれて二人の雰囲気がここに集まる人の中でも異質なのが伝わってくる。絶対的支配者の雰囲気と、私のことを見定めるような、そんな視線。


「ミーク、これから先は我々も同行しよう、国のことが掛かっているからな」


 二人の前にたどり着いた時に、絢爛豪華な衣装を着た方の人が私の目をじっと見つめる。


 国という言葉に、背中がゾッとした。


 異世界に来て、それで世界を救うのは、どれ程の重荷なのかを理解していなかった。


 平和な島国で暮らしていた私が、突然世界を救ってくれって言われて、はい喜んでと言えるほどに、メンタル強くないわ。と、初め聖女様って呼ばれて嬉しかったけど、背負うものがそれだけじゃないって気がついた。 


***


 召喚された聖女に歓喜する人たちを横目に俺と、この国の第一王子である、オズワルドは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。


 入り口付近の柱に二人で寄りかかるようにして様子を眺めていた。 聖女召喚の儀にオズワルドの同席を最初ミークは拒否していたが、王族の願いを最終的には聞き入れる形になった。成功するか、失敗するか五分五分の賭けに、聖女は呼びかけに見事応えてくれた。


 先代の聖女、俺の母さんは悪戯好きで、聖女の力を持っていたけれど、自分の寿命を削るものだと気がついたいのは、俺が魔導士として才能を開花させた七歳の時だった。

 聖魔法を聖女並みとはいかなくても、多少は力になれると喜んだのに、母さんは俺に聖魔法を使わせようとしなかった。


 寿命を削り続けて母さんは、俺が九歳の時に命を落とした。


 国中で、母さんの死を悲しんで、俺も悲しかったけど、それよりも、国が守られることを一番心配していた母さん。強力な結界を張っていたから、暫く、国は守られると思って安心していた。

そんな偉大だけど、遊び心盛りだくさんの聖女様の遺言が出てきたのが、母さんが死んでから十数年経ってからだ。


《リュー国に今後現れる聖女は、異界から呼び寄せるべき。世界に危機が訪れる未来が見えたのが、杞憂であればいいが、備えて置いて欲しい。異界の聖女の力を、求めるべき。拒否されないように、頑張ってねん♪》


 神殿でミークが祈りを捧げていた時に、ひょこっと登場した遺言。


 その場に居合わせていた俺は、その遺言をみて、新しい聖女が生まれることを喜んで要る周囲の人間に俺はどう反応していいのか分からなかった。


 隣では、異世界から召喚された少女を見定めるような瞳で第一王子が見ていた。

 

「この国にも聖女が生まれればよかったのに」


 俺たちの会話は、他の人には聞こえないように魔法をかけてある。王子のことを子供の頃から隣にいて見てきたから、彼が国を守りたいと思っている反面、王族以外の人生を国に縛り付けることを願っていない。


「仕方ありません。聖女の資質のある者が生まれるのは差があります」


 俺は聖女に選ばれなかった。証である紋様が出てこなかった。


「だからと言って、運命を捻じ曲げて、国に連れてくるのは、やはり納得できない」


 オズワルドの言葉に俺は、この人が国を引っ張っていく限り隣で支えていこうと胸に決めていた。


 召喚された少女は、遠目で見ても聖の魔力を感じるほどで、その魂は清らかに映った。


 何も知らないで、ただ、国に命を捧げろと言うことにはしたく無い。元の世界に残してきたであるろう、愛しき人もいるはずだ。一度世界を渡った者が元の世界に戻れる話を聞いたことが無い。だからせめて、彼女が無理やり連れてこられて悲しい、と思わないようにしなければ。


「長は嬉しそうだな」


「そりゃ、嬉しいでしょう。聖龍様だけで国を覆う邪気を防ぎ切れないですから」


 俺達の視線に気がついたのか、少女が俺達をじっと見つめる。蝋燭だけじゃ視線が合っているかわからないけど、彼女とは視線が絡んだ気がした。


「ミュゼァ、よろしく頼むぞ」


「分かっています。彼女の事は守ります」


 彼女が召喚された瞬間から、国を覆おうとしていた邪気が和らいだ気がした。後で探せばわかると思うが、きっと彼女の体のどこかにこの国を守護する聖獣のシンボルの痣があるはずだ。聖女の印、死ぬまで国のために生きることを強いられる者の証。


「俺が聖女だったらよかったのに」


 この国でも過去に男性が聖女だったこともある。他国では男が聖女だと言う話も聞いている。どういう基準で選ばれているのかは分からなくて、それでいて生まれてくるスパンもまばらな時がある。聖女不在の時は、教会に聖魔法の使い手が集まり、国を守護している。


「お前が聖女だったら、オレの方が仕事をしろって怒られるな」


「今と変わらないじゃ無いですか」


 オズワルドの楽しげな声も他の人には聞こえない。


 ミークが手をとり、聖女が俺たちの元に歩いてこられるように、集まった人々が道を開ける。

 俺は、母さんみたく、命を削り、聖魔法を使うタイプではないことを願った。

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございます!!

まだまだ続きます!!

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