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Step3 座学のおさらいをしましょう

「うわぁ〜ん! ノキシくん、助けてぇ! センセェが、厳しいぃ!」

「あー、ごめん。オレには無理だ……」


 昨日の顔合わせから一夜明けて、生徒達はみんな仲良くなっていた。やはり、後輩というのは可愛いな……。

 そして、皇子には学園島で学んでいく上で致命的な問題が発覚した。そう、皇子は力加減がド下手くそなのだ……!

 竜の国でも思っていた事だが、今は力加減が多少下手でもいいかもしれない。それでも、今後はそうも言ってられない状況になる。それならば、この世界の基本知識の前に、力加減を教えて込まなければ!


「あっ、逃げるな! 豆腐を潰さずに持てるまで特訓は続くぞ!」

「センセェの、鬼ぃ〜!」



――



「ぜぇ、はぁ……で、できたぁ……!」

「おぉ! すごいぞ、サキ!」

「サキ君、お疲れ様!」

「フッ……俺様には、キミがやり遂げる事ができるとわかっていたさ……」


 皇子が息を切らせながらも両手で優しく持った豆腐を見せつけるかの様に持ち上げている。この短時間でよくやったなぁ。


「よし、これなら次のステップに進められるぞ……皇子は、人間の姿に変化する術は習ったか?」

「変化の術? できるよ! ホラ!」


 ドロン! という音と共に、皇子の姿が若草色の髪と瞳を持つ子どもの竜人に変化する。よしよし、内で座学ができる。ドラゴンの姿だと教室が手狭なのが少し気になっていたんだ。


「おぉ、すっげぇな! オレと同じ、竜人の姿だ!」

「えへへ、おそろいだね!」


 あぁ、本当、後輩たちが可愛らしい……。と、そうじゃない。授業だ、授業。人の少ないこの島だと、「後輩」が新鮮で、ついついやるべき事を忘れてしまいそうになってしまうな。


「よし、それじゃあ授業にしよう。先ずは座学からだが……皇子はどれほど、この世界の知識があるんだ?」

「えっとね、大体は、教わった!」


 流石は王族、皇子はドラゴンの中でもかなり幼い方なのに、もう大体の事は教わっているのか。それなら、座学はおさらいだけにして、実践をメインにしてもいいかもしれない。ノキシ達も筆記試験は既に通過済みらしいし。


「それなら……そうだな……うん。お前達、この世界の国々の名前と特徴を南から順に、言えるか?」

「うん! 先ず、えっと……ボクら、ドラゴンが王サマの、竜の国!」

「その次は、教育機関の集まるココ、学園諸島ですね」

「で、オレの故郷で勇者発祥の地、魔王国だ!」

「その隣が商業国家の輝きの国。一攫千金を狙うロマンチストが集う場所さ!」


 ……


「で、最後が、何百年も、外に出てこない、ローガイ……じゃないや、神サマだけが、住んでる、神殿島!」

「うんうん。よくできたな。正解だ」


 予想以上によくできているな。私としては、一、二ヶ所くらいは間違えそうだと思ったんだがな。

 感心して頷いていると、チーナが控えめに手を挙げて言った。


「そういえば……先生。学園諸島は勇者教育以外の全ての教育を担っている、と習ったのですが。何故、勇者教育だけは魔王国なのでしょうか? 私、どうしてもわからなくて……」

「あぁ、それか。確かに不思議だろうな」


 コレは多くの勇者達が疑問に思う事だ。私自身、勇者教育を受けていた時は気になって仕方がない謎でもあった。


「アレは二代目の魔王……初代勇者が言い出した、と言うか、駄々をこねたんだ。自身の故郷である魔王国で勇者を育てたい、とな。で、インヨウ学長がそれを認めて、勇者教育だけは魔王国でやるようになったんだ」


 学長が言うには、魔王の駄々のこね様は相当で、恥も外聞もかなぐり捨てていたらしい。


「初代勇者って……二千年前の事じゃん! 何者なんだ、学長は!?」

「すっごく、長生きなんだね! ボクの、ひいお爺サマが、王サマだった頃だ!」


 四人から驚きの声が上がる。しかし、驚くなと言う方が無理なものだ。私も当時は驚いたし、神を除けば、最も長命なドラゴンでさえ、寿命は八百年なのだから。


「学長はな。神々のやり方に違を唱えて神殿島から家出をした学業神なんだよ」

「なん、と……あのミスターが……」

「驚きです……!」


 今はまあ、隠居をした老人といった風だからな。だが、こんなのでも、昔はやり手の教育者だったんだぞ?


「神サマ、ローガイだけじゃ、ないんだね!」


 皇子がニコリと笑って言う。笑顔は可愛くていいんだが、言ってる内容はかなり辛辣だ……。なんというか、無自覚って怖いな。

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