手紙
親愛なるアルフへ
「人間は争いを好む種族だ。いや、好むという言い方は語弊があるかもしれないが争い続けてきたのは歴史が証明している。その歴史の中に正義による戦いなんてものは無い。少なくとも争いの当事者達が掲げている正義とは正義たり得ない。主観による正義ほど正義という語義から遠ざかったものはないと私個人としては思ってしまう。それは正義ではなく欲望と言うべきだ。各々の欲望のために人間は争いをし、その一つ一つの結果の積み重ねが全体を俯瞰して見た時の歴史という集合体となるのだと思う。勿論平和と呼べるような時期も同じくらいたくさんある。戦間期と呼ばれることもあるがこれは後世からの目線であり、当事者達は間違いなく平和だと思っていただろう。おっと一人語りをしてしまったな。君に二つほど質問したい事があったんだ。本当に平和という語が意味する事象というものは起こり得るのだろうか。そして私達が享受していると思われるこの時間は果たして平和と呼べるのだろうか」
追記 お願いだからこっちにもなるべく顔を出してくれよ、いつも先生が俺に小言を言ってくるんだ、毎回毎回たまったもんじゃない。頼むよ。
統一歴 415年 ジョセフ マルワー