一話 誕生日前日
初めまして、ほかきあと申します。
初投稿です。
拙い出来だとは思いますが、宜しくお願い致します。
切りの良いところで、三話まで投稿します。
毎週一話更新を目標に頑張ります。
青い星。
その星はガイスリィと呼ばれる大小様々な国が領土や覇権を握る為に争い今も各地で戦争をしている。
世界中に分布する怪物、所謂モンスター、危険な生物が陸・海・空問わず跋扈する。
そんな星の東の大陸にある大きな川のある街から離れた山間にある戦争などとは縁が無い名もない集落からもう少し山を登った辺りに小さな湖があるそこには古い建物が二件あり、一件はボロボロの平屋でその隣には少し大き目の建物がある床は板張りのしっかりした作りの道場の様だ。
平家の家から遠く西の空に異変を見る。地上から光が立ち昇り雲を吹き散らし轟音をたてた。その空を一人のお爺さんが三人の小さな子供達と見ていた。空を見ながら爺さんが考える。
(遂に封印が解かれたか、いずれ発見される事は分かっていたが。遅かれ早かれか……だが時期が悪いな。儂ももう八十を過ぎた……もう五十年儂が若ければ……いや無い物ねだりをしてもしかたないか。しかし見方を変えればこの子達が順調に育っている事を考えれば……最悪な言い方じゃが不幸中の幸いか……)
小さな女の子が爺さんの服を引っ張り、少し怯えた様に顔を上げ爺さんを見る。爺さんは小さな女の子のピンク色の頭にそっと手をやり少し撫でる。
銀色の髪の毛の男の子と黒髪の男の子は空を指差して驚き、はしゃいでいた。
(この子達には済まないが、やはりこの子達に託すしか無いだろう。これ程の潜在能力があればきっと……それに、この子達が生きて行く為にもこの世界で生き抜く為にも)
この後、爺さんは三人の子供を鍛えるべく厳しい修行と知識を付ける為に色々な勉学をさせて行く。
この西の空の異変後、各地で戦争が激化していく。戦争は発明の母とは良く言った物で。兵器や魔法理論、科学技術が劇的に成長する。魔法と科学技術の融合などにより戦車や爆弾、銃火器も大きく変化していった。同時に一般社会の生活レベルも飛躍していく。代表的な物は自動車や家電と呼ばれる冷蔵庫や洗濯機等が産まれた。科学技術の飛躍的に伸びていった時期だった。
十年後。
壁はあちこち補修された痕跡がある今は集落の子供達が集まって学校代わりになっているここは、爺さんの住む家の隣にある道場だ。
子供達の数は十人程年齢はバラバラで先生をしているのはこの道場のある家の爺さんと、集落にいる男の先生だ二人は小さい子供達ともう少し成長した子供達とで受け持ちを分けている。
今小さい子供達が受けている授業内容はこの世界の基本、魔元素と気その成り立ちを勉強をしている。
「魔元素と気皆さんも当たり前に毎日目にしたり聞いたりしている言葉だと思いますが、もう使えている人もいますしね」
ハイハーイと手を挙げる子が何名かいる。
「この魔元素と気ですが空気の中にある魔元素を実際に確認出来る様になったのはここ数十年前ですが魔法という技術としてはずっと昔から使われていました、昨今の科学技術の進歩によりその魔法というもののメカニズムが解明され……」
この世界では、魔元素(大気中の成分、属性元素とも呼ばれるものを呼吸で体内に取り入れる事で、超常現象を起こす元となる)と、気(それ単体でも集中して高めると身体能力の強化などができ、生物ならどんな生物でも持っている力、総量や質は才能や個人差はあるが鍛錬などによる後天的な成長も見込める)と呼ばれる力を混ぜ合わせる事で超常現象を起こすことが出来る、魔法という技術が古くから使われて来た。
現在では科学技術の劇的な進歩により、カセット(魔元素とモンスターコアと言うモンスターの核の中にある気を抽出して混ぜて封入している、四角い金属ケースの様な形をしている。特定の現象を起こす為の機械にカセットを差し込み使用する、代表的な物にカセットコンロが有る)と言うアイテムがある。
「……カセットを使ってお家の料理や電気を点けたりといった事が簡単になっていますよね。そんな魔元素ですが皆さんが魔元素を使って現象を起こす為には呼吸で魔元素を体内に取り込み自分の身体の中にある気と混ぜ合わせなければ……」
低学年の授業内容を耳にしながら高学年十歳から十三歳位の子供達は、あーあの授業退屈なんだよなぁとか思いながら読み書きや計算の授業を受けている。
正午より少し前、授業が終わるか終わらないかの時に数日前から街に出ていた四人のハンター達が集落に戻って来た。
ハンターとは、ハンターギルドに登録して依頼を達成する事で報酬、主に賃金を稼いでいる者達の事だ。
ハンターにはG〜Sまでのランクがあり、Sから上はS1S2と横に数字が付いていく、しかし実際にはSランクまで到達するハンターは極々稀だ。
そんな憧れのハンター達が道場までお土産を持ってきた。
「おーい爺さーん、先生、お昼ご飯に良いお土産持って来たぞー!」
生徒達は一斉に立ち上がり外に出迎えに走っていった荷車に入っている大きなモンスター、ビッグボアを見て皆んな驚いている。
「うおーすげー!」
「でっかいねー」
「これリックのパパがやっつけたの?」
リックのパパと呼ばれた男、黒いレザーで出来た頑丈な戦闘服にショルダーパッドやニーパッド、脛当て等の防具で身を固めたハンターが答える。
「俺一人ではこんな大きなモンスターを倒す事は出来ないさ、皆んなで力を合わせて倒したんだ」
子供達がすぐに群がってハンターの人達と喋り始めた、そしてリックのパパと呼ばれたハンターが、爺さんの元まで来た
「白爺さんいつもありがとうな、こんな田舎で子供達がちゃんと勉強出来るのも、俺達がこうしてハンターになれたのも白爺さんのおかげだよ、なぁリック」
「うん!」
「何を言っとる、ゼインお互い様じゃ儂とて此奴らを一人で育てられたわけではない、皆協力して生きてきたんじゃ」
じゃあ昼飯にしようとリックの父親ゼインが言うと皆んなで荷車からビッグボア、所謂大きい猪だ。ゆうに体長二メートルを超えているソレを降ろす、爺さんが炭をおこし先生が網を持って来て焼肉が始まった。
『いっただっきまーす!』
「おーいしー!」
「野菜も食べろよ!」
昼食を食べ終わり何時もはこれから先生が帰るまで道場で稽古をするが今日はハンターの人達と一緒に先生と子供達は帰っていった。
昼食後、道場でこの家に住んでいる二人の少年と一人の少女が稽古をしている、先程は高学年の側に座っていた子供達だ。
一人は銀髪でサイドを大きく刈り上げた所謂ツーブロック、後頭部で銀髪を縛っている少年は木刀を構えて素振りをしている。もう一方は黒髪が逆立ちかなり野性味のある少年こちらは大きな木刀を持って素振りをしている。その直ぐ近くの壁際で精神統一して集中力を高め魔法のコントロール訓練をしているのは、ピンクゴールドの綺麗な髪の毛、毛先の方に行くにつれてピンクがかったこの世界でも珍しい髪色をした髪を、肩より少し長いくらいで切り揃えた活発そうな少女がいる。その隣にいるのはこの三人の師匠であり育ての親である白爺さんだ。
皆、白い道着の様な格好で訓練に励んでいる。
「うむ……良い感じじゃ、呼吸も良いそのままフォースと自分の使いたい魔元素の属性を自身の気と鳩尾の辺りで練り上げる様にして合わせるんじゃ」
火属性の魔法を使いながら同時に風属性を使って火力を上げる、上手く出来れば気の使用効率は格段に良くなるが
「ここまではいつも通り出来るんだけどなー」
魔元素と気を練り上げ掌の上に火がともる、風の属性を同時に操って火を大きくしようとする 火が一瞬大きくなるがこの調整が非常に難しい、風を操ろうと意識が偏ると途端に
(あ……消えちゃう……)
風の力で蝋燭の火が吹かれる様に搔き消える
「フウお前は取り込める魔元素の量や属性の種類が人よりも多く大きい、お前は自分が使いたい魔元素を選択する作業が人よりも複雑な分練習が必要じゃ」
「単純に一つの魔元素の属性を扱うだけなら普通に出来るんだけどなぁ……」
どれ少し手を貸してやろうと、白爺はフウと呼んだピンクゴールドの髪色の少女の肩へ手を置いた。
「ほれ、もう一度やってみい」
「……うん」
言われるがままにやってみる、先程と同じ様に炎を掌に出す、これだけなら簡単なのだ、問題はここから風を調節して火力を上げる、これが中々難しい少しでもコントロールを謝ると火が吹き消される。
「ふむ、炎は良い」
「……うん」
「風を使う事だけ意識してみなさい」
「うん」
すると、いつもはコントロールが難しいのに風がスムーズに調節され、炎が消されず火力をあげ渦巻く。
「良いぞ、今は儂がお前に触れる事でお前の魔法を解析してコントロールしておるが、この感覚は分かるな?」
白爺は相手の魔法や気に触れる事でその魔法を、解析して自在に操る事が出来る、相手の魔法や気を操る能力解析学習がある。その能力を使い箸の使い方を相手の手を取って教えるように三人に魔法や気の使い方を教えてきた。白爺がサポートしている間は出来るが、一人でやると途端に上手く出来なくなる。二つ以上の属性を同時に使うのはそれ程に難しい。
「うん……なんとなく」
「この感覚を覚えておけ、そして練習するしかない、結局は感覚を掴むまで練習するしかないんじゃ、実戦レベルにするにはな。こんなに時間が掛かっていては魔法など使えんからな」
そう言われて、また練習を再開するフウ。
その時二人で素振りの訓練をしていたはずの少年達がいつの間にか組手に変わって剣戟を交わし鍔迫り合いをしていた、二人とも後ろに一旦距離を取る。
次の瞬間黒髪の少年が一気に距離を詰めるべく一直線に前へ出た。
「オラァ!」
黒髪の少年が下から真上にすくい上げる様に木刀を振り上げると銀髪の少年は軽い調子で
「見え見えだね」
半身になり躱す、躱す動作で回転して勢いそのままに返す刀で横薙ぎに木刀を振るうと黒髪の少年は大上段まで振り上げた木刀を瞬時に振り下ろす
「何が見え見えだってぇ」
「楽勝なんだよ!」
剣と剣がぶつかる二人とも激しい攻防を繰り広げている
「ふざけんなよぉぉぉぉぉ」
だんだんと二人とも熱くなる黒髪の少年の怒涛の連撃だが明らかに一振り一振り丁寧さが無くなり四振り五振りともなれば最早大振りになっている。躱し続けている銀髪の少年もだんだん躱し方が甘くなり先程までの最小限の動きで躱すという様な動きでは無い。
「これでも喰らいやがれぇ!」
黒髪の少年が気を高めて強力な横薙ぎの一撃を放つが、制御が乱れる。
「バッ……カやろ!」
銀髪の少年はギリギリの所で大きく宙返りで躱すとドォォォンと道場の壁が壊れる音がする。
集中力を高め制御訓練をしていたフウが冷や汗をかいている、それもそのはず自分の真横の壁が突然破壊されたのだ。
精神集中していたフウの訓練を観ていた爺さんがワナワナと震えていた。
「こぉんのぉ馬鹿たれどもー! 何度言ったら分かるんだお前らはー!」
「やべぇ……じじいがまたキレたぞ……」
「やべーな……やっちまったなレオ……俺は知らねーからな」
「あぁ? 何言ってんだギンが避けっからだろうがよ」
「ばかじゃねーのあんなのまともに受けないから普通」
「こぉんのぉ……クソ馬鹿たれどもがぁ! 何を言い合っとんじゃー! そもそも熱くなり過ぎだと何度言ったら分かるんだ、戦闘中に熱くならん様に精神集中して冷静さを保つ意味も込めて訓練をしとるんだと何度も言わせるな! そもそもお前らいつから組手になっておるんじゃ儂は素振りをしろと言ったはずだ! その後は気の制御訓練をしろと言われなかったか! それに二人とも動きに無駄が多いギンお前は身体能力に頼り過ぎだ、もっと基本をしっかりせいなんだあのレオの連撃の避け方は」
「チッうるせ〜……避けれてんだから良いだろ別に……一発もあたってねーしさ……」
小声でぼやいている
「ざまぁ、怒られてやんの」
ゴンッとレオは頭に衝撃を感じる。白爺の拳骨だった。
「痛ってぇな!」
レオは頭を抑えながら文句を言う。
「お前の方が問題じゃ真っ先に熱くなりおってあんなただただ棒っきれ振り回す様な事を誰から教わった? なんだあの連続攻撃は最後の方などキレも速度も無くなっておったわそれに壁を壊した最後の一撃もまるでなっとらん気も制御出来とらんかったろうが、あんなもんは当たらん一つ一つの動作をもっと大事にしろ」
懇々と白爺の説教を受けているレオを横目に。
「ざまあみろ」
ギンが小さな声で言っているのが聞こえたフウが心底呆れた様子で
「あんたら筋金入りの馬鹿だよね……呆れてものも言えないわ……」
『うるせー!』
二人同時にゲンコツだった。
「クッソォ痛えなぁちくしょうがぁ」
レオの手の皮膚が内側から破ける様に破裂して出血している気の制御を誤った為だ、気の使い方や制御を誤ると自身の身体を傷つけてしまう事もある。
「馬鹿もんがあんなもんは技では無いわ、力任せに気を練りおって、あんな事ばかりしておったらいずれ四肢を吹き飛ばすぞお前は暫く組手は禁止じゃ、気をもっと上手く練れるまで制御訓練じゃ」
「うげぇー俺あれ好きじゃねぇんだよ……つまんねぇから……」
「うるさいわお前の好き嫌いの問題じゃない今日はもういい風呂にでも入ってこい!フウはレオを治療してやれ」
ピンクゴールドの髪を掻き上げながら
「えー面倒くさいなー、もう早く手見せなさいよ」
「おう、フウ早く治療してくれ!」
「は? 何上から言ってんのよ?」
フウが途轍もなく恐ろしい笑顔をニコッとして、レオの手を軽く握る。
「あ……フウ様……どうかこのアホみたいなワタクシの治療をして頂けないでしょうか……」
「まー頼み方の及第点はとれてるか、良かろう治療してやる」
フウは魔法による治療が出来る、治癒魔法しかしこの世界の治癒魔法とは劇的に怪我が治ったり欠損した四肢が元通りに戻ったりはしない、体力の回復は多少するが失われた血液が戻ったりもしない。
「痛ってぇ! もう少し優しく出来ねぇのかよ 」
「なーにー! 文句があんなら自分でやればい
ーんじゃなーい!」
ぎゃーぎゃー言いながら治療されていた、痛えとかなんとかなんねぇのかとかうるさいわねーなどと聞こえてくるのを他所にさっさと風呂に入って夕飯の準備に取り掛かるギンだった。
食事は基本的にいつもギンが作っている、役割分担でフウは洗濯や家の掃除、レオは道場の掃除だ。
今日は道場の壁を壊してしまったので修理もしている。
「だークソ、手は痛ぇし抑え辛いし面倒くせぇし」
「レオー早くしなよーギンがそろそろご飯できるってさー」
「わかったぁすぐ行く」
「ちゃんと直してからね」
今日の夕飯は山の森で取れた山菜の炒め物と天ぷらにお昼に残ったビッグボアの肉のステーキだ。
処理が手早く上手なので獣独特の臭みも無い、獣肉はその個体を獲る時に苦しんで死んだり内臓を傷つけたり処理が下手だと味が格段に落ちたり、臭みが出たりするから仕留めるなら一発だとハンター達が前に言っていた事を思い出す。
「ヨシ上手く焼けたな」
ビッグボアのステーキ、イノシシの肉と非常に似ている脂身は意外とあっさりしていて淡白だ、その脂がキラキラと輝いているフウとレオがそれを見て目をキラキラさせている
『いっただっきまーす』
『頂きます』
肉肉ーとフウとレオがテンションを上げまくっている、爺さんとギンは黙々と食べていた。
「なにこれ美味しい!」
「噛めば噛む程味が出てくる美味すぎんぞ……恐ろしい奴め」
「うるせー奴らだなあ」
「なんで? なんでそんなに普通に食べてんの?」
「え……だって俺自分で作ったし、味見もしたし」
「食事の時にそんなに騒ぐな」
レオとフウは超美味いよねーとか騒いでいた
何時もの賑やかな夕飯が終わる
風呂をすませ三人がそれぞれ布団に入り明日の事を思うワクワクソワソワしてなかなか眠れない。
三人は戦災孤児で物心つく前から爺さんに拾われて育てて貰っている、だから自分達の親が誰で何処にいて生きているのか死んでいるのかもわからない、勿論何処で産まれ誕生日がいつなのかも全く知らない、だから他の子供と接するまで誕生日という日を家族皆んなで祝う日だというのも知らなかった。
そんな三人はある日爺さんに自分達の誕生日を聞いた事があったが、これには爺さんも困ってしまっていた、なので誕生日を自分達で決める事にした。
そう明日が三人で決めた誕生日だ、三人は興奮して中々眠れずに自分達のプレゼントが何か、貰えるのか貰えないのかなどと考えていた。
「なぁお前らさぁ明日何貰えると思う?」
「私はお洋服がいいなー可愛いやつが欲しいな、スカートとかワンピースみたいな」
「俺は武器がいいなぁでっけぇ大刀が欲しいそんでもう少し強くなったらさぁ……」
「レオは貰えないんじゃねー」
「あ? なんでだよ?」
「だって今日やらかしたろ」
「だったらギンも同じだろ!」
「同じじゃねーよ俺は壊してねーもん」
「お前は何欲しいんだよ?」
「あー俺は欲しいって言うか美味いもんが沢山食いてーなあ」
三人は明日の事を考え話しながら眠っていった。
ギンは夢を見る。
度々この夢を見ている気がする。
円筒形の筒の様な物の中なのだろうか確かな事は分からない、円筒形の筒の中、自分がいる場所は液体で満たされている、筒はガラスばりの様になっていて外が見えるが外側は薄暗く赤や緑や青といった小さな光が点々と見える。
ピッ……ピピ……c……lls…異j……し。
何か機械の音声の様な音がうっすら聴こえる少し奥でじじいが何かやっているのが見える。
この夢はまた朝起きると忘れるのだろう。
白爺は一人明日の三人の誕生日プレゼントを用意している。
思い出す。
(思えば色々あったもんじゃなぁ。子育てなんぞした事もない儂が色々集落の者達に手伝ってもらったとはいえ、いきなり三人もの子供達を育てる事になり悪戦苦闘したもんじゃ、今迄で一番大変だったかもしれんなぁ)
乳児の頃から三人を育ててきた、これまで長かった様な気もするがあっという間に大きくなった様にも感じる、なんだか毎年この日は感慨深く感じる。
(これが、親というものなんじゃろうかのう、あの子達がこれだけ育っても、分からんもんじゃなぁ子育てとは、正解などないんじゃろうな)
そんな事を考えたり、小さかった三人を思い出したりしながら、なんとか最終調整はパーティが始まる前には終わりそうだ。
(ワシも歳か、九十も過ぎた。もう長くは無いだろう。あの封印が解かれて既に十年か、だがこれさえ渡せれば、ワシが居なくなっても大丈夫じゃろう。少なくとも生きていくだけなら)
数年程前から作り続けているプレゼント。
明日の三人の顔を思い浮かべながら、嬉しそうに作業を続けている、気が付けば外は少し明るくなっていた、作業は朝まで続いた。