零話 人類の叡智
十年程前
暗い、明かりが無ければ何も見えないだろう。手に持つライトを頼りに岩肌に囲まれた場所を進むのは十五名の探索隊。肩や胸、腹、太腿、脛などあちこちに緩衝材が付いた黒い戦闘服を着用している。剣や盾、アサルトライフルの様な銃と様々な武装もしていて探索隊というより何処かの軍の小隊と言われた方が納得のいく様だ。
ガチャガチャと音をたてながら武装した探索隊はライトで先を照らしながら歩く。
その後ろには男性三人、女性二人の五名が護衛されながらついて行く。
ここは、地図にも載っていない誰も知らない名もない島。ここに辿り着くだけでも非常に困難であった、この島に船で近づこうとも海流が酷く荒れていて中々近づく事も出来ないのだ。空からも同様でどういう事か先ず島付近の風の動きが尋常ではない、鳥さえ飛んでいないのだ。その島へこの探索隊は強度の高い最新の技術で作られた船で無理矢理に海流を突破して島へ上陸する事に成功する。
島には地下奥深くまで続く洞窟があった。今はその洞窟の中を進んでいる。
「いけどもいけども何もないな」
戦闘服を着用した男の一人が言う。護衛されて進む一人の男が確信している様に言葉を出す。
「このまま進んでくれ、この場所で間違い無い」
更に歩を進めて行くと今度はどんどん道幅が少しずつ広がって行く。
「一体この先に何があるんですか?」
「……進めばわかる」
広がった道をどんどん先に進む。違和感がある、壁はずっと岩肌だと思っていたが所々照らすと金属質の壁が見える。ただの洞窟では無い、人工的な何かを探索隊一行は感じていた。
更に進むとほぼ勾配の無い横穴になって行く壁の金属部分も増えていく様な気がする。
「な……なんだこれは……」
護衛している男があまりの光景に思わず言った。
横穴を抜けると、巨大な建造物があった。赤や青、白や緑の光点があちこちで点滅している。この建物がある場所はよく見るとどうやらドーム状になっている様だが天井の方は暗くてよく見えない、壁は横穴を抜けた時点で完全に金属の壁で覆われていた。ドームの天井付近まである巨大な建造物の地面付近は多種多様、大小様様なコードやホースに動力パイプの様なモノが建造物に繋がっていた、そんな巨大な建造物を前に護衛達は口々に言う。
「遺跡だ」
「しかも、生きてるぞこの遺跡は……」
「なんてデカさだ、こんな物が地下にあったのか」
護衛されていた女性の一人が巨大な建造物を見上げて感動している。もう一人の女性が先程護衛隊に先を促した男に声をかける。
「博士、本当にありました……凄いです。でもこれは一体何なんですか?」
すると先程、先を促した博士と呼ばれた男が両手を広げる。そして大きな声で笑い出した。
「ハハ、済まない。私とした事が、興奮してしまったよ」
他の護衛されていた男達も、興味津々で博士を見る。
「これは、人類の叡智の結晶だ」
全員が、唾を飲み込み黙る。
「やっと見つけた」
(コレさえあれば、フフフハハ。思考の中でさえも笑いが止まらん、少し興奮し過ぎているな。あぁ、漸くだ…漸く取り戻せる)
「博士! 博士!」
「なんだ」
「それで、その人類の叡智というのはどういう事なんでしょうか?」
博士と呼ばれた男が巨大な建造物に向かって歩き出す、この博士と呼ばれる男の年の頃は四十半ばくらいだろうか、若くして博士になり四十代で世紀の発見をした。両手を広げ高らかに宣言する様に。
「時期に分かる、これから世界が始まるのだ」