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終わりに

ソルト!

椎名の右腕が異様に伸びていく。

それは蛇のようにしなりと、


「いやぁぁあぁぁあぁ!」


気色悪さを備えていた。


「キッモい!キモいキモい!イヤァァァアア!」

「この娘はボクのものだこの娘はボクのものだ」


全力で右腕を振り回し、涙目で嫌悪を露わにしている。

その姿はゴキブリに手を這いずり回れている少女のようだ。

ガシッと、オレの頭部が掴まれる。

易意だ。


「ソルト!」

「えっちょっ待っ」

「効くんだろ!?」

「いやわかんないんじゃね」

「えーい」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


せめて心の準備させて欲しいと思ったら茶々が横からオレをぶん投げた。

しかし、

にょろにょろと伸びる腕がオレを器用に躱す。新体操のリボンの奇怪なうねりのように。


「えい、えい、もーいっかーい」

「くっ、当たらない!」

「俺をもっと大切にしてくれよ!」


茶々と易意がガムシャラにオレを投擲するが、椎名の腕に取り憑いた人形には当たらなかった。


「この娘はボクのものだ」


…壊れたスピーカーみたいに同じセリフ繰り返すのはやめて欲しい。ちょっと、いやかなり不気味だから。

てかすんごい疲れる。オレが減っているから普通に疲れる。


「あっ、そうだ!」

「うぶぅ」


なかやか当たらない現状に打開策を思いついたのか、易意はオレを力強く掴む。


「椎名さん、ごめん!」


易意は伸びる腕を掻い潜り、椎名の肩に俺を揉み込んだ。


「なんかビリビリするぅぅ!」


腕に小さな電流が走る感覚なのだろうか。椎名は背筋をぞわぞわさせていた。すごく不快そうに。


「この娘…は…ボク…の」


どうやら効果覿面だったらしい。腕が縮んでいく。

あと一撃でなんとかなりそうだ。

何かないかと室内を見渡せば、火にかけられて絶賛沸騰中の鍋を見つけた。


「茶々!そこのお湯」

「えっ、うん、わかったー」


オレを熱湯に混ぜ、


「椎名、腕借りるぞ」

「え、あっまさか」


コシのないウドンみたいな腕を掴んでそのままぶち込んだ。


「ーーーー、ーーー、ー…ーー…」


声にならない悲鳴が泡とともに消え、異様に伸びていた腕がするすると元の長さへと戻っていく。


「ふぅ、なんとかなった」

「よかったぁぁー」

「酷い目に合った…」


人形は、茹る水の中に溶けていった。


「あっ、椎名!手!」

「へっ?…あ、えっと」

「火傷は、大丈夫そうだねー」


全員が肩の力を抜き、息を吐く。

自然と、目が室内を正しく認識する。


「あっ」

「…あ」

「あーー」


散乱する小物、目に付く白い粉、そしてこぼれ落ちた水。


「…」


皆んな冷静になったので掃除した。


ーーーーーーーーーーーーーー


「なんか無駄に疲れたな」

「なにやってんだろね、僕ら」

「これからどーするー」


掃除が終わって一段落したオレらは困った。

四階で調べるところが思い付かない。


「…そういえばなんだけど」

「どうした」

「さっきのって、噂の怪奇現象じゃない」



「ホントだ」

「なんで気付かなかったんだ」

「それじゃー黒いモヤもー?」

「あれかな、渡り廊下のトラウマってやつ」

「でも階段が消える噂なんて知らないわよ」

「確かに、僕も知らない」


どうして忘れていたんだ、俺たちは学園の七不思議を確かめに来ていたのに。

今の今まで思考からすっぽり抜け落ちていたみたいに。


「ちょっと水でも飲んでくるわ」


椎名は現状に疲れたのか気分転換しに行った。

そういえば俺も腹が減ったな。


なにか冷蔵庫にお手頃な食糧がないだろうか。


すると、


「皆んな来て!階段が!」

「えっ!」


俺らはすぐさま階段があった場所に向かった。





「階段が、ある」


そこには、本来あるべきものがあった。

先ほどまで平地だった場所に。正確には平地になっていた場所に。

幻覚ではない。足を延ばせば確かに段差が存在する。


「どーして今まで消えてたんだろー」

「まずは降りてみよう」

「そうだな、もたもたしてまた階段が消えたら洒落にならねぇ」


俺たちは内心ビビりながら三階に降りた。

三階までしか降りれなかった。


「二階への階段は、ないか」

「いったい誰の仕業なんだ」


当たり前にあるはずのものがない、まるで狐に化かされたみたいだ。


廊下端の教室の扉がひとりでに開いた。まるで俺たちを誘うかのように。

誰かいるのかもしれない。そう思わずにはいられなかった。


「ヒェ」


深く息を吸い、覚悟を決め、俺たちは二年一組の教室へと歩を、


「おぉぉぉぉぉぉい」


進めようとした。

俺たちを止めたのは、トイレから響く、謎の呼び声だった。

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