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吸血鬼さん、報告する2

「さて」

 『狐』は、仕切り直すように手を軽く叩く。

「調べたことだったり、考察だったりは聞いたけれど、結局ダンジョンはどうだったのかしら?」

「ん? そこそこ下ったって言わなかったっけ?」

「そうではなくて」

 『狐』は、呆れた様子で続ける。

「入った感想よ」

「あーそっちかあ……」

 私は腕を組んで唸り、振り返る。感情的な意味での印象は薄かったけれど、あえて言うなら。

「……楽に稼げそう?」

「その心は?」

「モンスターが兎に角雑魚」

 危険だ危険だと聞いていた割には、ちっとも危機を感じなかった。まあ、人間基準で言うところの危険と百年以上生きている化け物とでは、危険の基準には雲泥の差があるので、妥当なところなのだろうけれど。ましてや私のような千年以上生きた化け物では、言わずもがな、だ。

「……そんなに弱かったかしら?」

 首を傾げる『狐』に、私は苦笑して解説する。

「だから、『鳥取砂丘ダンジョン』とあなたの能力は極端に相性が悪いのよ。あのダンジョンで湧くモンスターは、どいつもこいつもただ決められたルーチンに従って動いているだけなの。それは、戦闘でも同じ。だから、あなたの主力になっている、相手の精神に干渉する能力だと、相性が極端に悪いのよ」

「なるほどねえ」

 『狐』はそう頷き、質問をぶつけてくる。

「だったら、ハッキング仕掛けたらいけるかしら?」

「それは無理だと思う」

 それに対し、私は解析結果とそこから推測出来ることを言う。

「あのダンジョンのモンスター達の行動を制御しているのは、あのダンジョンそのものだからね。ダンジョン内からならハッキングを仕掛けること自体は出来るだろうけれど、まず間違いなく物理的に排除しようとしてくると思うよ?」

「あなたが護衛についても無理かしら?」

「それは有りだろうけれど、どんな方法で排除しにくるか分からないから、安全、とは言えないかな?」

「なら止めておいた方が良さそうね」

 『狐』は残念そうに肩をすくめる。綺麗な肩だな、と思っていると、『狐』はコホン、と咳をした。

「話を戻すわね。稼げそう、って判断したのは、モンスターが弱いから、だけではないわね?」

「まあね。五十層に湧くボスなんだけど、サンドゴーレム、っていう砂人形の、身体が砂鉄で出来たバージョンだったんだよね。そのドロップの『ゴーレムコア』を買い取り所に売ったら、一個で十万クレジットだったのよ」

「凄いわねえ。確か、サンドゴーレムのコアが五万円でしょう?」

「流石『狐』、知ってるのかあ。その通り。で、買い取り所の職員曰く『まだ適正価格が分からないからとりあえず十万クレジットで買いますが、適正価格が付けば、ほぼ確実に一個あたり二十万クレジットを越してくるでしょう』ってさ」

「ってことは、そのコアにはまだ値段はついていないのね?」

「だねえ。だから、十万から下がる可能性もあるけど、基本的に二十万越すものとして考えてる」

「妥当な判断ねえ。でも、下がった場合はどうするのかしら?」

 『狐』はクスクスと笑う。

「探索者協会から貰った冊子によると、モンスターはボスも含めて一定時間で再出現、リポップするらしいのよ。だから、上手くやればサンドゴーレムと砂鉄のゴーレムの間を行き来出来るから、それを使って数を揃えるつもり」

「なるほどねえ。それならいけるでしょうから、頑張りなさい」

「言われなくても」

 ゴーレムコアは、コンピュータの部品に使うと凄いことになるらしい。成人男性の心臓位の大きさなんだけれど、CPUとメモリとHDDを同時にまかなうことが出来る上に、それらを増設したとしても何の問題もなく動き、一定以上の熱を吸収する特性を持つのだとか。それらの何が凄いのか分からないけれど、熱暴走しにくくなるのは便利だと思う。

 ともかく、そういう訳でゴーレムコアの需要はもの凄く、買い取り所の人曰く一度に千個程持ち込まれたところで相場が崩れる心配はないらしい。だから安心して、私はゴーレムを乱獲出来る。

「まあ、走って移動しないといけないから結構だれるとは思うけど」

 今からげんなりしていると、『狐』の顔色が変わった。

「ちょっと待って」

 怖い? それとも何かを恐れた? そんな表情だ。

「あなた、第五十二層まで行ったのよね」

「そうだよ?」

「『ポータル』は無かったのかしら?」

「『ポータル』?」

 何のことか分からずに首を傾げると、『狐』は深刻そうな表情で説明してくれる。

「ポータルというのはね、ダンジョンにある不思議設備のひとつでね、触れると行ったことのある階層に移動出来るのよ。そのダンジョンの階層の半分まで行けば、その機能が解放されるのだけれど、無かったのね?」

「形はどんな感じのものなの?」

「外見は石碑みたいだわ」

「だったら無かったなあ」

 答えると、『狐』は腕を組んで「んー」と唸る。何か問題があったようだ。

「何か問題が?」

「ええまあ」

 『狐』は頭が痛そうな表情を浮かべる。

「さっきも言ったけれど、ポータル機能はそのダンジョンの階層の半分まで行けば解放されるのよ」

「ってことは、『鳥取砂丘ダンジョン』は百層以上はあるってことになるね。それの何が問題なの?」

「……さっき立てた私の予想が外れていそうなだけよ」

「そう言うこともあるよ」

 そう元気付けると、『狐』は呆れた様子でため息をついた。解せぬ。

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