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吸血鬼さん、探索者になる

 探索者になるには、日本州だと全国各地にあるダンジョン前に設置されている『日本探索者協会』で手続きをすれば良い、らしい。

 自動車免許みたいに長い講習があるのかな、と身構えつつ、『狐』のバーで一晩潰した翌朝、鳥取駅から鳥取砂丘まで直通のバスに乗って『鳥取砂丘ダンジョン』へ向かう。昔は軍の訓練場だったのが、今や観光地となっているのは面白いと思う。

 一時期より減った市街地の店や砂丘周辺の松林に思いを馳せつつバスにしばらく揺られていると、すぐに鳥取砂丘を見渡せる、展望台風の駐車場に着いた。『日本探索者協会鳥取砂丘前支部』は、ここから少し離れたところ、昔は食事処しか無かった場所の一角にある、筈。

 意外と傾斜のある坂道を歩き、『日本探索者協会鳥取砂丘前支部』と安っぽい看板の立てられたプレハブ三階建ての施設に入る。入ってすぐにカウンターがあり、少し狭苦しい。

「すみません」

「はい。何でしょうか?」

「探索者になりたいんですが」

「かしこまりました。では、こちらの書類を書いてください」

 ここの職員らしき若い女性から渡された書類に書き込んでいく。しまった、まだ電話の契約をしていない。住所は『狐』の家になっているからそれを書くとして、これが終わったら、使えなくなったスマートデバイスの代わりのデバイスを買って契約をしてこないと。

 頭の中で予定を立てつつ、書類を書き上げる。この間、誰もこの建物に入って来ないけれど、それは平日だからかな? 少し心配になる。

「書けました」

「はい。少々お待ちください」

 女性は書類を持って奥に行き、なにやらパソコンを操作する。その気になれば画面が見えるけれど、いいのかな? 流石に杜撰すぎない? 一応ここ半民とはいえ半分公の組織だよ?

 不安で一杯になっている間に、女性は作業を終えたのか、一枚のカードと小さな冊子を持ってこちらに来る。

「はい、登録は終わりました。こちらの冊子に注意事項が一通り載っておりますので、熟読してからダンジョンにお入りください」

「はい」

 他に何かないのか待つも、女性は『さあ帰れ』という雰囲気をかもし出すだけで何も言わない。

「あのー、これだけですか?」

「はい、これだけです」

 これだけらしい。長い講習を覚悟していたのが、台無しだ。

「……分かりました」

 プレハブの建物を出て、『探索者証』と書かれたカードをジーンズのポケットに入れ、プレハブの前に立って冊子を読む。今日は薄曇りの良い天気なので、細かく書かれた文字も読みやすい。

「『ダンジョンの中で死んでも基本的に自己責任』『ダンジョンの中の怪我は保険適用外』『ダンジョン探索中に死んだ場合、遺言状を残していなかったら資産は全て国のもの』初っぱなから飛ばしていくねえ」

 どうやら、探索者は超絶ブラック職業のようだ。

「『武器は市販のものも可だけれど、ダンジョン内での使用は日本探索者協会の各支部で認められた場合のみ』『日本探索者協会の販売する武器はダンジョン内での使用は特に許可は必要ない』『武器は必ず日本探索者協会各支部の専用の貸金庫に仕舞うこと』うっわお金取る気だ」

 貸金庫は一番安いものでも月一万クレジットから。ただし武器以外を預けてもいいのは便利かも?

「『防具については特に許可は要らない』『武器防具はしっかり整備すること』『武器防具はお金を出せば日本探索者協会が整備を請け負う』ここら辺は妥当かな?」

 整備費最低五千クレジットからが高いのか安いのかは分からないけれど。必要になる防具の一覧に安全靴と軍手以上の丈夫さの手袋と書かれているのは高評価。ダンジョンに入るまでに各種防具を使い慣らすよう注意書きを赤字で強調しているのも良。

「『ダンジョンに入る際は武器防具の他に、最低限は飲み物、軽食、救急キットを持つこと』『荷物はザックタイプのカバンで背負い続けるか、肩掛けカバンですぐ落とせる状態にするかしておくこと』『武器を使う必要のない時は両手を開けておくこと』ここら辺は素人さん向けのアドバイスか」

 『他の探索者がいて、戦闘状態にない時は武器を仕舞う』『まだいけるはもう無理』等、ここら辺の助言は、戦闘の経験がないなら重要になる。

 私? 川中島で武田信玄に斬りかかる上杉政虎の背中を守っていたとか関ヶ原で島左近と一緒に徳川家康を討ち取ったと言えば色々察して貰えると思う。あの時代は傭兵として日本中を転々としていたけれど、色々楽しかったなあ。その後の豊臣摂関政治時代に天皇家の命令で世界を歩き回ったのも中々楽しかったけれど、化け物達が一番活き活きとしていた日本の戦国時代が一番好きだ。その後は完全に人間の時代になったからなあ。

 少し懐かしい気持ちになった。

「後は、『鳥取砂丘ダンジョン』の注意事項かあ」

 現在確認されているだけで、半径十キロメートルに及ぶ階層が三十以上。十一層以降は時間経過で地形が変化するのは厄介そうだ。

「稼ぎ所は……、『第八層に落ちている砂金』『第二十層のボス、サンドゴーレムの核』。他に無いの?」

 無いのか、危険と釣り合わないのかは気になるけれど、第九層までは特に危険なモンスターもおらず安全に移動出来るみたいなのは良いと思う。

「とりあえず、様子見しようかな?」

 そう決めて、私は『鳥取砂丘ダンジョン』の出入り口のあるらしい、プレハブ三階建ての建物の裏に向かった。

関ヶ原のあたりの歴史は私達のものと全く違っているので、希望があるなら、簡単な説明を投稿します。

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