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遺書の書き方  作者: 佐田ユズル
1/1

大人

部屋掃除を一通り終えて、ソファに腰掛けた。就職して一年目の時にニトリで購入した白い三人掛けソファだが、長い間使ったからか所々汚れている。白は好きだけど、汚れが目立つのが難点だな。

部屋には思い出のあるものがまだ少し残っている。その一つ一つが自分がここに住んでいたことを証明してくれる。仮にも自分の居場所であったことに、変わりはない様だ。

部屋にはダンボールが五つ置いてある。お気に入りの服と小説だけは、どうしても捨てれなかった。部屋の間取りは2DKと、一人暮らしにしては少し大きい。社会人になり部屋を迷っていた時にイタリア調の窓に落ち着きを感じて決めた部屋だった。要らないものは捨てカラーボックスや机も処分した今では、ソファやタンスなど大きな家具だけしか残っておらず、殺風景な部屋で少し寂しさを感じる。


時計の針は5時過ぎを指していた。薄明るくなってきた空が朝を知らせる。


『ぐるる…』


お腹がマヌケな音を出した。そういえばご飯は昨日から食べていない。カフェでモーニングを食べ様にも時間が早すぎるか。

考えながら立ち上がり、シャワーを浴びる準備を始める。朝のシャワーは好きだった。その日の始まりという感じがあるからだ。習慣がそれを思わせているのか、それとも自分がそういう人間なのかはわからない。

古代ギリシア哲学者アリストテレスの言葉。

人格は繰り返す行動の総計である。

それゆえに優秀さは単発的な行動にあらず、習慣である。

何処かの文学で教わった言葉であり、今の自分を作り上げた言葉でもある。

シャワーと身支度を済ましてカフェに向かった。


『コーヒーAセット』

行きつけの喫茶店は我が家から車で十分。店内に入ると共に店員とアイコンタクトを交わしたら、いつも座る喫煙席の窓側の席に着く。一言で伝わるのはいい。


ヘッドホンを付けて、あとは自分の世界に入り込んでししまえばこっちのものだ。まあ、何がこっちのものなのかもわからないが。

いつも同じ曲を聴くせいか、いつも通り母と父のことを思い出していた。


ドッッガガガッギギギィィィイィイイ

『キャァァアァアァァァァアアアァ…


『ぉ…ぁ…こ、ご…ぉめん…


母は中学生の時、父は22歳の時にこの世を去った。27歳になった僕は、ただ呆然と過去に囚われながら生きていた。

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