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惜しみない愛を、君に  作者: 塔守
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九話 以前から随分大きくて厚みもあるダイアリーだと思っていたが、おそらく一ページを一日分とした三六五日分のページがあるタイプなのだろう

 少し落ち着いた後、妙中さんは、「アレルギーではないかな」と言った。至極真っ当な推測と思われた。但し、僕に自覚は無かった。


(ふみ)やんは普段チョコレートを食べないのかな?」


「そうですね、小さい頃以来だと思います」


 妙中さんはその細い(あご)に手を当てて難しそうな顔をする。


「現代に生きていて、チョコレートを口にしない生活など、私には考えられない」


「そうですか」


「いつもお菓子売り場で何を買うのだ、文やんは」


「お菓子は買いません」


「食べないのか」


 心底意外そうな顔をした。


「家に有って勧められれば食べます」


「なんというお菓子観の違いであろうか。私などお菓子無しでは生きていけないというのに」


 と言って、掌で目元を覆い隠す仕草をしたが、今の話のどこを、と思ったが妙中さんはメモを取ろうとしてか、ダイアリーを探したけれどそれが手許に無いことに気付いた。


先程取り乱して落としたままだったのだ。


「これはいけない」


 ダイアリーを拾って土を払う。


 その際、普段僕に見えないようにしている中身がぱらぱらと垣間見えた。


 随分カラフルに、どのページにも文字が沢山書かれているのが分かった。


 文章ひとかたまりごとに色を変えているようだ。


 以前から随分大きくて厚みもあるダイアリーだと思っていたが、おそらく一ページを一日分とした三六五日分のページがあるタイプなのだろう。


 メモというより、リアルタイムで付けている日記のような側面もあるのかもしれない。


「親御さんは、アレルギーについては何も?」


 いつもの六色ボールペンでダイアリーに書きながら訊くものだから、調書を取っている刑事か探偵のようだ。


「聞いたことはありません。しかし、小さい頃、チョコレートを食べてよく鼻血を出していた記憶はあります。それで、母が僕にチョコレートを与えるのをやめたのかもしれません」


 食物アレルギーは大人になってから突然発症することもあると聞いたことがある。僕の場合、小さい頃に母が止めてくれたお蔭で今日まで無事だったのかもしれない。


「知らなかったとは言え、大変申し訳ないことをした。この詫びは今度必ず」


 真面目に謝る時には随分と真面目な口調になるなんて、律儀できちんとした人だと思った。

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