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惜しみない愛を、君に  作者: 塔守
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四話 「次の日曜日は何か予定ある?」

 妙中さんは早速携帯電話のアドレス交換を申し出て、僕としてもそれは必要な行為と思えたので同意して実施した。


 妙中さんは、鞄からダイアリーを取り出した。女子高校生には不似合いな、ビジネスマンが使っていそうな立派なダイアリーである。流石に女の子らしくシールやら何やらで可愛らしく飾り付けられている状態にはなっているけれど。


 そこに僕の名前と電話番号にメールアドレスを書き込む。


 握っているのは珍しい六色ボールペンだ。六色も使い分けているとなると、なかなかまめな性格なのだろうか。


「それで、僕はどうしたら良いでしょうか。なにぶん、異性の方とお付き合いするのも初めてなもので、僕が何を求められているのかがまだ分かりません。他の方と同じように接しているだけでは、お付き合いしているとも言えないと思いますし」


 僕がそう訊くと妙中さんは鼻の頭を撫でながらちょっと考えて、「わたし、家があるのはもう二つ向こうの駅の方なのです。今日は文蔵さんとこうしてお話しするために、ここで降りたのですが」と直接答えにならないことを言った。


「それはわざわざすみません」


「――いえ、わたしの都合でそうしたことですから。それで、今日は急に呼び止めてしまったわけですし、その、わたしここで一旦帰らせていただきますので、文蔵さんも本日は予定通りお過ごしいただければと思いますが……」


 なるほど。初日だからか。


 なにか、喫茶店だとかファーストフード店だとかに入って少しお互いのことを話したりなどするのかと思っていたけれど、僕にだって予定があるだろうと踏んで今日はこれで解散とは。妙中さんはなかなか気遣いの出来る子なのではないだろうか。


「一つ、お願いしても宜しいでしょうか」


 妙中さんから帰りのホームルームの終わった頃に「何分頃の電車の何両目に乗るよ」というメールが届いた。


 それが「一緒に帰ることを所望する」という意思表示だと気が付くのに何度か掛かったため、僕はそのことに謝罪した。


「そうですか」としか返信していなかったし、会わなかった時は一人で帰っていたのだ。


 同じ電車に乗った際も違う車両のまま一人で降りたこともあったかもしれない。


 ということで、妙中さんから来るメールの意味が理解出来た僕は、伝えられた電車の、同じ車両に乗り込んで妙中さんと会合を果たすことが日常的に出来るようになった。


 ある日の下校時、隣同士で座っていた妙中さんが僕に問いかけてきた。


「ロクちゃんは次の日曜日は何か予定ある?」


 彼女は僕のことを六穂の六を取ってロクちゃんと呼ぶことがある。僕の方からは彼女の希望通り妙中さんと呼んでいる。


「予定ですか。空いた日はいつも、本を読んだり勉強をしたりあとはゲームをすることにしています。なので、そういう予定です」


 そう答えると、妙中さんはまた少し呆けたような顔をして、頭をぶんぶんと振ると「ええと」と呟いて上目づかいで「もう一度お願いします」と言った。


 僕が一言一句同じことを述べた。


 妙中さんは納得した顔をしてこう言った。


「では、訊き方を変えますね。次の日曜日、2月7日ですね、もしも特別な御用が無ければ、どこかへ一緒に行きませんか?」


 なるほど、予定を訊かれたので何をするつもりか答えたけれど、一緒に過ごしたいがゆえに相手の予定を確認しているということか。女性とお付き合いするというのはなかなかに難しい。


「良いですよ。どこに行きましょうか」


「本当ですか、嬉しいです。そうですね、どこにしましょう……」

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