三話 僕の表情はいつも皆に言われるようにぴくりとも動いていないのだろう。なにか悪い印象を与えないと良いのだけれど
「――困りました」
女の子は一瞬呆けたような顔をしたので、僕は、何に困ったのかを説明する。
「僕は生まれて一七年、女の子から好意を告げられたのは今日が初めてなのですが、幸いにも僕のことを好きだと言ってくださった相手だというのに、僕はあなたのことが誰なのかが皆目分からないのです。誰だか分からないということはどんな人物なのか分からないということで、どんなことが僕に求められているのかを類推または判断する材料が非常に乏しいのです」
多分、僕の表情はいつも皆に言われるようにぴくりとも動いていないのだろう。なにか悪い印象を与えないと良いのだけれど。
「しかし考えようによっては、何かしらお付き合いというものが無ければ、相手のことを知ることも出来ないですね」
僕は考えたままを口にする。
「してみた方が良いでしょうか、お付き合い」
目の前の女の子は、びっくりはしているようだけど、先程の呆けたような顔とは変わって、目に光が戻っている。
「あの――是非、お願いします」
勢いのいい告白だったけれど、今は落ち着いている。
「大変……失礼なのですが……もしかしてわたし、自己紹介もしておりませんでした?」
「ええ、そうですね。ああいうのを単刀直入というのだな、と感じ入っていたところです」
後ろを向いて何やら地団太でも踏んでいるかのような仕草を見せたがすぐに彼女は振り返り、「妙中と申します。宜しくお願い致します」と丁寧なお辞儀を見せた。
すぐに僕も「文蔵六穂です。どうぞよろしく」と返した。




