表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
惜しみない愛を、君に  作者: 塔守
29/39

二九話 要求をして、全部受け止めて貰って。それでいて愛する男の簡単な要求に答えられないで、なにが恋人か

 テーブルを挟んで向かいに座った彼が差し出したのは封筒だった。


 葉書がそのまま入るようなサイズで、表面には何も書かれていない。


「開けて、中の便箋(びんせん)を読んで貰えますか。お願いします」


 心臓が、直接殴られたように大きく跳ねた。


 なんだろう、これは。


 いつも、訊けばなんでもほぼ即答してくれる彼が、自分から、しかも間接的に伝えたいこと――心に悪い想像が広がる。


 直接言いたくないことを、書いたのだろうか。


 例えば。


 別れようだとか。――いや、そんなはずは。


 でも。


 さっきも自分で思ったばかりだ。


 自分は彼に嫌われても仕方の無いことをきっとたくさんしてきている。


 だから、有り得る。


 有り得るけど――それだけは絶対あって欲しくない。


 どうして。


 どうして、何が書いてあるか言ってくれないのか。


 どうしてわたしに開けさせるのか。


 怖い。


 中を見るのが怖い。


 でも。


 でも。


 そんな内容じゃない可能性だってある。どうして彼は今日に限って自宅に自分を招いたのか。別れたい相手をわざわざその日初めて家に上げるだろうか。


 だから、きっと、違う。違うと信じたい。


 ロクちゃん、これは何なの。


 安心させて欲しくてわたしは視線を上げてロクちゃんを見る。冷たいわけではない。しかしその顔に感情を表す動きはやはり無く、正にも負にも読み取れる情報は何も無かった。


 でも。


 彼は言ったのだ。「お願いします」と。


 考えてみれば自分たちが付き合い始めて、初めて、彼の方から何かを乞われたのではないか。いつも、自分の方が希望を出して、要求をして、全部受け止めて貰って。それでいて愛する男の簡単な要求に答えられないで、なにが恋人か。


 告白を決行した日を思い出した。あの日のために、なけなしの勇気を絞り出して溜め込んで一気に吐き出したあの感覚を。生憎、最近ストックしていなかったけれど。


 わたしは、封筒を開けた

















挿絵(By みてみん)









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ